2021年7月12日月曜日

バットマン・ビギンズ (2006)

アメリカのマンガ雑誌と言えば、DCコミックとマーベル・コミックが双璧をなしています。スタートはDCコミックが1934年、マーベル・コミックが1939年。DCコミックは1938年に「スーパーマン」、1939年に「バットマン」が登場し、圧倒的な人気を誇りました。これらは、TVドラマとしても日本で紹介されましたので、昭和おやじとしては、マーベル系よりも圧倒的に馴染み深い存在です。


映画としては、最近は圧倒的にマーベルが強い。DCコミックの主役級を集めたジャスティス・リーグよりも、マーベルのアヴェンジャースに人気の軍配は上がっていることは否定できません。

スーパー・ヒーロー物では、ワーナーブラザーズとDCコミックは「スーパーマン」が先陣を切りましたが、続編のシリーズ(全4作品)が一段落した後、1989年に「バットマン」のシリーズに着手します。監督のティム・バートンは、TVシリーズのコミカルな要素を排して、ダークなヒーロー像を構築して成功しました。

しかし、さらにダークにバットマンの内面を掘り下げたのが、クリストファー・ノーラン監督。2006年に開始された新シリーズの三部作は、いずれも大ヒットし高い評価を得ています。

タイトルからして「ビギンズ」は、何故、そしてどうやってブルース・ウェインがバットマンになったかを描く作品。バットマンはクリスチャン・ベール、忠実なウェイン家の執事アレックスはマイケル・ケイン、ここではまだ単なる刑事のゴードンはゲンイリー・オールドマンが演じます。そして、ブルースの幼馴染で悪と対峙するゴッサムの女検事レイチェルとしてケイティ・ホームズが登場します。

ゴッサム・シティの大富豪ウェイン家の一人息子ブルースは、遊んでいて古井戸に落ち、蝙蝠の大群に遭遇したことが恐怖としてトラウマになっています。そして、オペラの観劇中に蝙蝠の演技を怖がったため、両親はブルースを裏から連れ出したところを強盗に襲われ射殺される。

10数年だって収監されていた両親殺しの犯人が保釈されると聞き、ブルースは拳銃を隠し持って犯人が出頭する公聴会に向かいます。しかし、直前で街のギャングの手によって犯人は射殺されるのでした。人殺しをしなくてすみましたが、レイチェルに「復讐は単なる自己満足」だと非難されます。

悪の本質を知りたくて旅に出たブルースは、チベットの山奥で影の軍団を率いるラーズ・アル・グール(渡辺謙)に出会い、彼の部下デュカード(リーアム・ニーソン)のもとで様々な戦闘訓練を受けます。しかし、彼らの悪を滅ぼすためにはゴッサム・シティのすべてを破壊する、という目標には納得できず「俺はゴッサムを守る」と言ってグールを倒し脱出するのでした。

ゴッサムに戻ったブルースは父の残した会社の研究部門のフォックス(モーガン・フリーマン)の協力で、様々な特殊な装備を手にします。そして、自分が恐怖を感じた蝙蝠をシンボルとして、悪人にも恐怖を与えるため蝙蝠のコスチュームに身を包むのでした。

ギャングのボスを動かぬ証拠とともに警察に引き渡し、悪を潰したいレイチェル、悪にくみさないゴードンらを助けます。しかし、ギャングの裏には、さらに何かを企んでいる黒幕がいる。彼らはウェイン産業が開発した水分を蒸発させるマイクロ波機器を盗み、ゴッサムの水道にばらまいた幻覚剤を気化させ狂気と化した人々を自滅させる計画だったのです。

ブルースの邸宅に乗り込んできたのはデュカードでした。実は彼こそが真のラーズ・アル・グールで、邸宅に火を放ち全焼させます。そして、マイクロ波を起動しようしているところで、バットマンとの最終対決が始まるのでした。

渡辺謙は登場場面はあまり多くはありませんが、それなりの存在感を示しました。マイケル・ケインもおじいさんになって、飄々とブルースを支えるところはうまい。何よりも、「太陽の帝国」のこどもだったクリスチャン・ベールが、意外にバットマンにはまっていて過去のバットマン俳優の中でも一二を争う出来です。

ノーラン監督は、CGに頼りすぎずに俳優の生身のアクションを重視する演出が特徴で、俳優陣はかなり頑張らされたのだろうと想像します。少なくとも、新しいバットマンのリブートですが、今まで知られていなかったポイントをうまく整理した内容であっという間の140分です。