2021年10月11日月曜日

銀河ヒッチハイクガイド (2005)

イギリスのダグラス・アダムスが書いたSF小説で、原作はかなりの人気作でシリーズ化されました(1979~1992年)。このタイトルそのものは、小説に出てくる電子本の名前で。テレビ・ドラマもあったようですが、2005年に満を持して映画化が公開され、原作を雰囲気を壊さずに皮肉っぽい笑いの要素をうまく視覚化したと高く評価されました。


監督はミュージカル・コメディの3Dアニメ「シング」のガース・ジェニングス。原作者のアダムスが初期稿の脚本に参加しましたが、心筋梗塞により2001年に亡くなったています。オープニングで使用された「ザ・ドルフィンス」は、破滅する地球からイルカが脱出する際に、今までたくさんの魚をありがとうと人間に語り掛けるもので、「ソロン、ソロン・・・(so long)」がやたりと耳につく不思議な曲。

ドジで失敗ばかりのアーサー・フィリップ・デント(マーティン・フリーマン)は、バイパス道路の着工で家を取り潰されそうになります。工事の責任者には、1年も前から市役所に掲示されていたのに抗議しなかったのが悪いと言われてしまう。そこへ親友・・・実は宇宙人のフォード・プリーフェクト(モス・デフ)がやって来て、どうせあと数分で地球はなくなるからそんなことはどうでもいいと説明。

アーサーの家を解体しているところへ、空に巨大な宇宙船がやってきて、ヴォゴン人の銀河系開発審議官が「辺境地区の開発のためバイパスを作るため、邪魔になる地球をこれから取り除きます。50年前から事務所で掲示していたことなので」と説明します。

フォードは宇宙船に向かって親指を突き立て、地球が壊される直前にデントと共にヒッチハイクに成功しました。フォードは宇宙ベストセラーになっている「銀河ヒッチハイク・ガイド」の著者でした。しかし、無断で船に転送して乗り込んだことでヒッチハイカーが嫌いなヴォゴン人に捕まり宇宙に放り出されてしまいます。

そこに通りかかったのが、銀河宇宙大統領・・・なんですがかなり胡散臭いゼイフォード・ビーブルブロックス(サム・ロックウェル)で、かつて地球でゼイフォードにナンパさアーサーのもとを去ったトリリアン(ズーイー・デシャネル)と一緒に伝説の惑星マグラシアを探す気ままな旅を楽しんでいるところで、ヒッチハイク信号により自動で二人を回収してしまいます。

ゼイフォードは勝手に宇宙に飛び出したため追われる身でしたが、大統領選挙での宿敵ハーマ・カヴーラ(ジョン・マルコヴィッチ)にトリリアンを拉致されてしまったため、救出に向かいます。何とか助け出した一行は、やっとのことでマグラシアに到着しますが、アーサーは早々にはぐれてしまいスラーティバートファースト(ビル・ナイ)と名乗る惑星製造人に連れられて、惑星建造工場を見学します。そこではなんと、バックアップの「地球」が完成間近だったのです!!

何とも、不思議な映画です。見る人のセンスを試されているような感じ。実は地球で一番の生物は・・・これがキーポイント。2番目が人間・・・じゃなくてイルカ。人間は3番目なのです。1番目の生物が地球を作ることを依頼して、人間は彼らにうまいことコントロールされていたらしい。

究極的には地球上での人間の思い上がりを痛烈に皮肉に笑い飛ばしているわけで、人類の嫌なところを官僚主義的で融通の利かないヴォゴン人に詰め込んだようです。ヒッチハイクは最初の2回だけで、まぁほとんど映画的には関係ありません。ガイド・ブックは、宇宙でのうまい過ごし方を知るうえで大変役に立つようで、映画では説明しきれない展開の解説文という役割を担っています。

頭でっかちのロボット、マーヴィンは本当は大変優秀な頭脳を搭載しているのですが、いつでも悲観的でぼやき続けているのが可愛らしい。ある意味、人間らしさでは登場人物の中で一番かもしれません。基本的にはハッピーエンドなんですが、アーサーは再始動する地球には自分はいらないと考え、冒険の末に自ら幸せを求めて行動するように生まれ変わるということ。

地球上には人類がはびこり、自分たちの利益のために多くの物を犠牲にしてきました。この映画、というより原作は今ならまだリセットしてやり直せるかもしれないということを気が付かせることがテーマのようです。