交通事故が減ったんだって。2008年の死者数が5155人。2007年につづいて5千人台を維持できたということです。
1970年ごろに交通事故による死者の数は年間16000人。一度減少しましたが、1990年ごろに再び1万人を超えてたそうです。
70年代は交通戦争なんていう言い方があって、東京の空はどんよりスモッグで煙っていました。自分が中学~高校生の頃ですかね。車が走り去ると、猛烈な臭い煙があたりに漂っていて、しばらく息を止めて歩いた記憶があります。
1960年代からのいろいろな公害訴訟なども、少しずつ決着が着き始め、日本人も環境というものに心を配りはじめました。しかし、1億総中流時代を迎え、それまで高嶺の花だった自家用車は、どこの家でも家電製品のように当たり前のものとなって、自動車の総数は増加の一途をたどりました。
また、バイクの数もそれにあわせて増えたんでしょうね。いわゆる暴走族の登場により、交通ルールを無視して運転する連中があふれかえったことで、90年代に再び交通戦争状態に突入。
その頃、自分は大学の救急に入り浸りの整形外科医でしたから、もう毎晩うんざりしていたんですよね。交通事故のケガは強い外力による損傷ですから、ケガの仕方もハンパじゃない。特にバイク運転者は生身の体をむき出しにしているわけですから、ひとたまりもありません。
昔は頭を決められて、即天国行きでしたから、ある意味よかった。ヘルメットの着用義務が導入されて80年代には確かに死亡者は減ったんでしょうけど、そのかわり首をやられて一生手足の麻痺になる脊髄損傷の患者さんが急増しました。
手足の骨折なんて、当たり前。それも何カ所も折れているから、もう全部を何とかするなんて無理、ということも珍しくない。肺が潰れたり、肝臓が破裂していたりした日には、もうとんでもありません。
それでも、各地に救急施設が増え始めて、かなり救命については可能になってきたということが、数字にも表れているんだと思います。
悲惨な飲酒運転事故が多発し、取り締まりが強化されたことも、事故を減らすことに大きく役立っているはずですよね。去年に限って言えば、ガソリン高騰からみんながECO運転をするようになったことも関係あるかもしれません。
しかし、交通ルールの無秩序だけはエスカレートする一方。信号は赤でも進めだし、反対車線でも平気ではみ出て走っていくバイクなんかは当たり前になっています。暴走族みたいなのではなく、それを一般の人がやっていることが恐ろしい。
そう考えると、それ以上は死者数は減少するもんじゃなさそうですよね。政府の方針としての死者数減少の目標達成ということらしいのですが、負傷者数は思ったより減っていないんじゃないでしょうか。医療的にも、こっちの方がむしろ大きな問題なのかもしれません。