2009年1月28日水曜日

リウマチ医の責任

関節リウマチの新しい患者さんを見つけたときは、大変に気を遣う者です。すでに、診断されている方、さらに治療を受けている方の場合は気楽、と言ったら怒られてしまうかもしれません。

でも、一度リウマチと決まれば、やることは決まっているわけで、いかにその患者さんに合った薬物療法を推進できるかが鍵になります。

新規の患者さんの場合には、そもそも確信を持って診断することができなければ、リスクの高い薬を使用することを患者さんに納得してもらえません。

ところが、これがあるからリウマチだという検査はありません。あくまで、怪しいという域を超えない。世間にはリウマチ反応、あるいはリウマチ因子と呼ばれている血液検査項目がありますが、残念ながらこれが陽性だといって確定するわけにはいきません(確定してしまう医者が多い)。

この数年でMMP3や抗CCP抗体といった検査が使えるようになり、判断材料が増えましたが、それでも100%のものではないのです。最終的には、経験的な医者の主観的な判断の介在する部分を排除できないのです。

つまり、リウマチは診断すること、それもできるだけ早期の状態で診断を確定することが一番難しい病気だということになります。

そして、リウマチであると判断したならば、場合によっては死亡するような重大な副作用を持った薬を使わせていただくわけですから、患者さんへの説明し十分にしなければならない。

さらに、現状では完治する病気とは言えないので、患者さんは一生病気と付き合っていくことになるわけですから、ある意味人生そのものに大きな影響を与えることになるのです。だから、大変に気を遣うということになるわけです。

また、一生懸命説明しても、結局大きな病院への転医を希望されることも少なくありません。正直言って、これはめげる、と同時にほっとする部分もあるんです。

現在も日本で最大患者数を誇る女子医リウマチセンターの非常勤講師をしている立場からは、自分のクリニックでやっていることとセンターでやっていることにはそんなに違いはありません。

それだけの自負を持って診療にあたっているのわけですから、患者さんが転医すると言うことは大変寂しい。自分の力の無さを痛感する瞬間です。

一方、リウマチと診断を下すことの責任から逃れられるということは、気持ち的には楽であるというのも事実。薬が必ず効果を奏するとは限らないので、どんなにがんばってもどんどん悪くなる方が必ずいるのです。そんなときには、患者さんから責められているような気持ちになります。

今日は、他院での今までの治療がほとんど効果を出していない患者さんと、まったく新規に発症した患者さんがいらっしゃいました。どちらに対しても、まだ道筋が見えていないわけですから、大きな責任があるわけです。

幸い、今日は(というか、今日も)比較的閑だったので、十分にお話ができたと思います。これから、一緒に何とかかんばっていきましょう。

病気は医者だけで治す物ではありませんから、医者と患者さんとが同じ目線で、協力していくことが大切なんです。