医者の言葉、よくわからん、としばしば言われてしまうわけです。そこで、それぞれの医者は、なるべく言いたいことを理解してもらいたいと考えて、自分なりに言葉を選んでいくわけです。
まぁ、せっかく話すことをわかってもらいたいと思うのは、どんな職業でも同じなんでしょうけどね。ただ限られた時間で、数をこなさなければならない場合には、どうしても一般の方にはわかりにくい専門用語を使ってしまう。
この言葉を使うと、意味が通じないかもと思いつつも、思わず使ってしまう。今は、暇な時間のほうが多いクリニックですから、できるだけわかりやすい説明をしているつもりですが、自分では分かりやすいと思っても、患者さんにとってはどうなんでしょう。
整形外科では足腰が痛いということでクリニックを訪れる方が多いわけで、その多くは「老化現象」という説明ができてしまう。この老化現象というのは、一見わかりやすいようですが、けっこうあやふや。
それに、高齢者の方に老化現象という言葉を使うと嫌がられますよね。そりゃ、自分では年を取ったと思っても、人には指摘されたくないものです。
若い方にももちろん使いにくい。自分はまだ老化なんかしていないと思いたいのは当然。簡単に老化ですなんていうと、ショックですよね。
でも、人間の体なんてもんは、10代後半で成熟して完成するわけです。完成したら、後は待っているのは老化しかありません。老化現象は転がる坂のように忍び寄ってくる・・・どころか、インディ・ジョーンズに迫ってくる転がる岩の如しなのです。
20代は、そんなことに気がつかず若さを享受し続ける。30代も、その勢いのまま突き進む。ところが、40代に入ると、そろそろ何か違うなぁと思うことがしばしば。以前は簡単だったことが、大変になってくる。
50代に入ればさすがに受け入れの準備ができてくるものの、社会的生活環境はそうは変わりません。60代には老化を認めて、生活も変わってくるものです。昔は、そろそろ社会的引退となるのでよかったのですが、現代ではまだ老人の仲間入りはできません。
高齢化社会が進む日本では、自分が70代のころには100歳を超えないと老人とはいえないようなことになっているかもしれません。
まぁ、そこで患者さんに向かって使う老化現象という言葉に代わる言葉をいつも考えているわけなんですが、「老化現象みたいなもの」なんていうぼけた言葉も使っていましたが、やはりどこか嘘っぽい。
最近、自分で気に入って使っているのが、「人間の体なんてものは消耗品」という説明です。これは嘘ではない。「でも、心はいつでも若く保てますから」というフォローの一言を続けて使うのも忘れてはいけない。
そんなわけで、気持ちの持ちようで良くも悪くもなることは多いわけですから、若い心で消耗を少しでも抑えようではありませんか。