これまでにも、しつこくしつこく書いているんですけど、どうもクラシックの声楽曲は苦手で、これまでにも何度かチャレンジしているもののダメなんです。
声楽というとマリア・カラスとかフィッシャーディカウとか、とにかくオペラの舞台の上で腹の底から声を出して・・・そうでなければ、宗教曲。当然キリスト教ということになって、どうもピンとこないわけです。
とにかく歌なんですけど、イタリア語かドイツ語がほとんどで歌詞がまったくわからないというのも、のめり込めない大きな理由の一つであることは間違いない。
シューベルトは歌曲の多さでは誰にも負けませんし、実際クラシックを聴かない人でも「アベ・マリア」とか「菩提樹」とか有名な曲が少なくありません。ところが、器楽曲は「う~ん、いいなぁ」とか思うのですが、歌曲は全然ダメ。
もうほとんど自分の中では、声楽というクラシックのジャンルはなかったことにした存在にまでなっているのです。モーツァルトの「レクイエム」や「魔笛」は弦楽四重奏などの室内楽編曲版があるので、そっちで楽しめばいい。
ところが、一大事件なんです。はじめて声楽曲で、こりゃすごい、聴かねばならぬと思うようなアルバムを見つけてしまいました。
それがジョン・エリオット・ガーディナー率いるモンテベルディ合唱団の「サンチャゴへの巡礼」と題されたCD。1964年に創設された歴史のある合唱団で、主として宗教曲や古いバロック以前の歌物を中心に活躍しています。
それなりにクラシックを聴いていくと、ガーディナーやモンテベルディ合唱団の名前はちょくちょく目にするのですが、これまでは当然声楽ジャンルということで気にもしていませんでした。
ところが、このアルバムはア・カペラなんですよ。ア・カペラというのは伴奏がないわけで、人間の肉声だけで成り立っていると言うこと。実はこのジャンルは、以外と好きなんです。
とは言っても、それはジャズでの話。シンガース・アンリミテッド、スイングル・シンガーズ、マンハッタン・トランスファーなどのコーラス・グループは昔から好きでよく聴いていました。
ア・カペラならってんで、それじゃ聴いてみるべというわけで・・・これが美しい、素晴らしい、天国から響いてくる音楽があるとすれば、きっとこれじゃないかと。まぁ、そんなに大袈裟なものでもないでしょうけど、とにかくいいんですよ。
合唱という形態だと、あのクラシック歌手独特の歌い方が目立たないのもいいのかもしれません。もちろん、何を歌っているのかはわかりませんが、人間の声を楽器と考えてしまえば、歌詞の内容が理解できないことは小さいことです。
キリスト教徒のフランスからスペインまでの巡礼の旅を、途中の土地の宗教曲を集めて再現するというコンセプトのようなんですが、とにかく異教徒でも心の洗われるような清らかな空気が充満する空間を十分に感じることができました。