2013年5月19日日曜日

小林愛美 / Debut

世界に名だたるピアニストが大勢いる・・・と言っても、どんな世界でも同じ事ですが、それだけ知れ渡るわうようになる人は全職業ピアニストのごく一握り。世の中には、大多数の人知れず消えていくピアニストであふれているはずです。

日本人は、どうしてもヨーロッパ中心のクラシック音楽の世界では「異邦人」的な存在で、世界で活躍している邦人ピアニストは一体何人いるんでしょうか。実質的に、世界で認められて活躍できているのは、内田光子、小川典子くらい、あとはジャズの世界ですが上原ひろみでしょうか。

最近話題になったのは視覚障害を持った辻井伸之ですが、2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した以降は、めだった活躍ができているとは言えません。彼の場合、視覚のハンディはかなりあり、フィーリング重視の演奏活動の方が目立っているのはやむをえない。

さて、ひょんなことから「きっと気に入る」と言われて、なんと小林愛美のCDを知人からいただきました。しかも、本人直筆サイン入り。

まったく中途半端な音楽マニアで、このピアニストについてはまったく知りませんでした。ネットに公開されている主な経歴を見てみると・・・

1995年山口県の生まれ。3歳からピアノを始め、7歳でオーケストラと共演、8歳よりメディアでも何度か取り上げられ、9歳で国際デビュー。2009年アジア太平洋国際ショパンピアノコンクールでJr部門優勝。2011年ショパン国際コンクールin Asia、コンチェルトの最高部門で金賞。

カーネギーホールへの出演4回、パリ、モスクワ、ブラジルでも演奏会を行っていて、2010年EMI Classicsより16歳でCDメジャーデビュー、2011年3月EMI Classicsよりセカンドアルバム「熱情」をリリース。桐朋学園在籍。

う~ん、思わずうなってしまうしかありません。現在18歳にして、なかなかのキャリアを積んでいる。恐るべし十代。しかし、本当の勝負は成人してからでしょう。ここまでは、ただの天才少女としのサクセスストーリーです。

天才的なこどもとして一躍有名になっても大人になってからはまったく輝きを失った例は、どの世界にも大勢います。よけいな肩書きがなくなって、ただの一人のピアニストとして世界で活躍できるようになるかどうかは、この数年が勝負だろうと思います。

ですから、16歳の高校生の演奏だと思えば圧倒される素晴らしいCDなのですが、期待を込めて他の名だたるピアニストと同列に扱いたい。特に、このCDには自分が好きなベートーヴェンのソナタ第21番「ワルトシュタイン」が収録されているので、けっこう本気で聴きました。

まず最初にすぐに気になったのが、冒頭の左手C単音の連打が弱い。ここが一番の特徴ですが、ここで注意をひかないと、続けて聴く気持ちがトーンダウンしてしまいます。それと、何でしょうか、独特の間がある感じ。慣れないと違和感になっていまいます。

第2楽章は、もともと「きわめて遅く」と指示されている通りで、きわめて遅い。もともと主題があまりはっきりしないので、遅すぎるとだれてしまう。自分はピアニストではないので、譜面を追って聴いたりはしませんが、楽譜に忠実なだけなら誰の演奏でも良くなってしまいます。

それとペダルを多用する印象もありました。ころころところがっていくような、単音の連続が楽しい曲なので、せっかく見事な乱れのない運指が濁ってしまうところがもったいない。

まぁ、わかったみたいな評論家調のことを書いてしまいましたが、あくまでも個人的な感想なのでお許しください。確かにちゃんと聴きたくなる素晴らしい出来映えな ので、今後に多いに期待したいと思います。コンクールだけがすべてではないのですが、2015年のショパン国際コンクールは目標にしていることだろうと思いますので、是非がんばってもらいたいものです。