カメラ初心者としては、どうしても被写体を真ん中に置いてしまうもの。あっ、これいい、と思うと後先を考えずにシャッターを切ってしまうからなんですが、記録的な要素が強い日常のスナップ写真はそれで何にも問題ありません。
ただ、多少なりともアートな気分で見ると、被写体がでーんっと真ん中にあるだけの何か平凡で残念感が強い写真となってしまうわけです。そういうのを、日の丸構図と呼ぶわけで、あらためて以前の写真を見るとそんなのばかり。
初心者的には、当然しょうがないんだと開き直って、どうせ日の丸なら、しっかり真ん中でとらえるというのもありらしい。もっとも、基本をおさえた上でのことですけどね。
少なくとも、水平・垂直はしっかり意識して、斜めになることは不安定感をわざと出したい時以外は避ける必要があります。
被写体によりますが、できるだけ写真は明るい方がいい。そして、当然のことながら撮りたいものはシャープにピントがあっていること。
また、人間の視覚は縦より横の方に広がるので、通常は画面は横長が一般的。縦にする場合は、被写体の長さを強調したいとか、あるいは空間的、あるいは時間的な流れを作りたい時などです。
そして、一番これだっというところを真ん中にしてしまえばいいだけなんですが、当然一度真ん中に視点が行くと、もう周りには行きにくいわけで、周囲がうるさいと邪魔になるだけ。
日の丸構図の目的は被写体を目立たせることなんで、周辺については色数的にも、色相的にも目立たない方がいい。また、複雑な模様ではなく、できるだけ単純な方がさらにいい。余裕があれば、周囲はうまくボケさせたいもの。
例えば、このひまわりの写真を見てどうですか? 花と横に伸びた葉を全部入れようとして、画面が斜めになっているのがそもそも気持ち悪い。周囲も、色はおとなしいのですが、壁とか柵とかの構造がうるさくて、花を中心に考えると背景がうるさすぎです。
そこで、本当は撮影した時にちゃんと考えていればよかったのですが、素人の浅はかなところで写真のこの一枚しかありません。しかたがないので、画像編集ソフトで加工してみます。
周りのうるさい背景を思い切り減らしてみました。撮りたい中心の花の一部が欠けてもいいくらいなんですが、その方が当然中心が強調できます。さらに周囲は違和感がない程度にぼかし効果を追加し、コントラストも明るめに修正しています。
どうです? ひまわりの写真としては、下の方がいいと思います。最初からこんな風にとれれば、いよいよ初心者からの脱却なんでしょうけど、まだまだですね。
これはどうでしょうか? 水族館の写真は、光が少なく、魚に動きがあるので難しいと言われています。ですから、これはほとんど偶然の構図なんですが、けっこういかしていると思いませんか。
イワシの群れの中を泳ぐサメとエイというだけですけど、何でいい感じなのかというと、これも一種の日の丸構図。一番の対象になるサメとエイがほぼど真ん中にいます。イワシは大量に周囲にいるわけで、比較的均一に散らばっているので背景としてテクスチャーとして機能しています。
そしてもう一つのポイントは、この写真が三分割法にもなっているというところではないでしょうか。二匹の魚は偶然、右向きと左向きにほぼ水平になっていて、しかもちょうど三分割の線上にいるんです。格子線を重ねてみると、こんな感じ・・・
いやぁ~、なかなかいいじゃないですか。これが意図して撮れれば完璧です。ついでにもう一つ。よくある街角で撮影するスナップ写真です。きれいなお姉さんがいたので、思わずパチリっというわけですが、お姉さんはど真ん中で一種の日の丸構図。
背景がしっかり写っているのですが、人物に重なって縦の木のラインと横にひろがる幕のラインがちよっとうるさい。右下には別の人の頭が中途半端に写りこんで邪魔。そこで、いっそのことお姉さんだけをトリミングして、中央1/3を占めるようにしたらどうでしょうか。
背景はぼかしをいれてあります。また、せっかくのプロポーションですから、あえて縦長にしてスマートな感じが出るようにしてみました。
こんな具合に、とにかく写したいものが一つはっきりしている場合は、積極的に日の丸構図を使用してもいいようです。ただし、いくつかの基本事項は忘れないことが大切ですし、日の丸構図の場合は被写体がはみ出すくらいの思い切りがあった方がいい。そして、構図の王道である三分割法も意識しておくことができれば、かなり上達しそうな感じです。