2016年5月13日金曜日

老化で膝が痛い


整形外科の外来では、腰の痛みと膝の痛みに困って来院する方が最も多くて、東西の二代横綱みたいなものです。

膝関節は、年齢とともに上下の骨の合わさる関節面が擦り減ります。総理大臣だって、ホームレスのおじさんだって、これは同じこと。ヒトが二足歩行動物に進化した必然みたいなもので、こればかりは避けることはできない。

寿命が延びたから、その分老化も遅くなればいいのですが、そうは問屋が卸さない。関節の表面の軟骨がどんどん無くなって、レントゲン写真を撮ると「隙間が狭い」状態になっていきます。これは、軟骨がレントゲンには写らないから。

特に、内側に体重がたくさんかかっているので、外側よりも内側がより狭くなっていくことが普通です。そうなると、すねが内側に傾いてくるので、がに股傾向が強くなって、左右の膝の間が広がってきます。

深く曲げるのが痛いので、しゃがむのが辛くなってくる。正座ができなくなったり、和式トイレが使えなくなったりする。もっとも、正座は体の構造上は「悪座」なんです。本来、膝は目一杯曲げてできるのはあぐら座りの角度までで、正座ではお尻を乗せて無理やりつぶした座り方をしているんです。

隙間が狭くなる、つまり上下の骨が接近してしまうということは、関節の周囲で膝を支えている靭帯などが緩んでしまうので、微妙に前後左右、あるいは捻りの動きでずれが出やすくなってくる。これが痛みを強くしたり、さらに老化の変化を進ませることにつながります。

だから、筋トレしてください、と医者がいうわけです。太ももの前側にある大きな大腿四頭筋が、膝を支える原動力です。老化の変化は避けられなくても、この筋肉を弱くしないことが、痛みを出さないようにする最大の予防になります。

痛みがでてしまったあとも、やはり筋トレをすれば、痛みを減らすことが可能ですから、通常はスクワットと呼ばれる方法をお勧めすることになります。スクワットはやり方しだいで、スポーツマンでも高齢者でも役に立つ簡単で効果的な運動です。

よく「毎日××歩も歩いてます」と言う方がおいでですが、何万歩歩いても筋トレではありません。歩くことは大事ですが、それだけで何とかなるわけではありません。

高齢化社会です。 ますます、膝を痛くする方は増えると思いますから、毎日の簡単な運動を是非やって、少しでも体の衰えを防ぎましょう。