2019年2月23日土曜日

インシテミル 7日間のデス・ゲーム (2010)

ホリプロ創立50周年を記念する映画で、出演者は全員がホリプロ所属のミステリー映画。監督は、「リング」で一躍有名になったホラー映画を中心に活躍する中田秀夫です。綾瀬はるか出演作としては、異色の一本と言えます。

昔は、芸能プロダクションというと例えば渡辺プロが圧倒的に力を持っていましたが、ホリプロは、70年代に一気に業界勢力図を変えました。その原動力となったのが、山口百恵であることに異をはさむ者はいないと思います。

中田ファン、または米澤穂信の原作を知っている人からは不評な映画です。自分としては、ホラー系はあまり好きじゃないし、原作は未読なので、豪華な俳優陣を楽しめました。やや最終解決が荒すぎるとは思いますが、映画にコンパクトにまとめるために推理よりもサスペンスを強調した感はありだと思います。

主として藤原竜也の視点で物語が進行し、好意を寄せる綾瀬はるかがヒロインという立ち位置になるのですが、基本的に「謎解き」があるので、あらすじはネタバレしない範囲にします。

フリーターでビビリの結城理久彦(藤原竜也)は、バイトを探していた時にコンビニでOLの須和名祥子(綾瀬はるか)に、不思議なバイトについてどう思うか声をかけられます。アルバイトの内容は、心理学実験で7日間密室に拘束されるだけで時給11万2千円というもの。興味が湧いた二人は、このバイトに参加します。

他の参加者は、
親からの虐待を受けた過去があるシングルマザーの関水美夜(石原さとみ)、
医学部を目指している学生なのに医者と名乗る大迫雄大(阿部力)、
その婚約者で今どき風の橘若菜(平山あや)、
疑心暗鬼をあおるような言動をする西野宗広(石井正則)、
一人殻に閉じこもっているような真木雪人(大野拓朗)、
実は連続通り魔事件の犯人である岩井荘助(武田真治)、
世田谷のマダム風を装う弁当屋を営む渕佐和子(片平なぎさ)、
そして息子が以前このバイトに参加して死んだという安東吉也(北大路欣也)です。

参加者に課せられたのは、7日間生き残ることだけ。何か事件が起こった場合、探偵役になって解決すれば報酬は倍。また、犯人になった場合も、そして死んだ場合も報酬が増えるというのです。

夜はそれぞれの個室から出てはいけないルールで、彼らを監視するガードと呼ばれる巡回ロボットがずっと警戒しています。また、それぞれの個室には人殺しができる様々なアイテムが一つずつ用意されていました。

この死のゲームが開始された当初は、10人はお互いを信用して黙って7日間を過ごそうと話し合うのですが、翌朝、西野が死んでいるのが発見されるところから、残りの9人の心の平衡が崩れ始めます。

虚栄心の強い大迫は探偵役を買って出て、なかば強引に岩井を犯人としたため、岩井はガードにより強制的に監獄部屋へ隔離投獄されます。しかし、次々と参加者が死体となり、お互いを疑い合い残った者の恐怖は増幅する一方でした・・・

参加者全員が集まれる部屋に置かれているのはインディアン人形で、A・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」のモチーフ。それぞれの殺人アイテムにも、有名な推理小説にちなんだものが用意され、推理小説ファンからするとニヤっとしたくなる。

映画では、あからさまに犯人がわかる場合もあるし、そうでない場合もある。犯人が誰かという事よりも、精神的に追い詰められていくことで殺人をも行ってしまう怖さに主眼を置いています。

そして、今を時めく綾瀬はるかと石原さとみの若手二大女優の共演は、キャラが被っているところがあるので今後も期待できないので貴重。二人とも謎の多い役柄で、ふだん演じているものとは異質で見所になっています。

最後にこの不思議なゲームが行われる理由も説明されますが、はっきり言ってリアリティは無く、期待通りと期待通りではない結末が半々で混ざっている感じがします。しかし、もともとが非現実的な設定ですから、登場人物の心理的な恐怖を拾い出せれば成功という映画。そういう意味では、下手するとバタバタと人が死んでいくだけの映画との境界は紙一重ですから、もう少し時間をかけてもらいたかったというところはあります。