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2019年2月12日火曜日

今夜、ロマンス劇場で (2018)

目下のところ、綾瀬はるか主演の映画としては最新作で、数々の名作映画へのオマージュを込めた武内秀樹監督作品。

白黒映画の世界から現実社会へ抜け出た「姫」は、映画監督志望の青年との恋に落ちるのだが、彼女は人の温もりに触れると消えてしまう運命だった!!

・・・という、何ともすごいファンタジーなのですが、初めは綾瀬はるか得意のコメディ要素満載なのですが、いつの間にか二人の切なすぎるストーリーにはまってしまいます。

死期が近づいている牧野老人には、いつも見舞いに来る孫がいますが、彼女は老人(加藤剛)が転びそうになっても支えたり助けたりしないらしい。老人は、入院している病院の担当看護師にせがまれて、昔書いた映画の脚本の話をすることになります。

通っていた映画館、ロマンス劇場で古い廃棄されるフィルムを見つけた健司(坂口健太郎)は、その中に登場するお転婆な姫、美雪(綾瀬はるか)に恋をしてしまいます。嵐の晩、落雷が落ち停電すると、何と映画の中の美雪が白黒のまま健司の目の前に現れました。

美雪は、健司を下僕と呼び、やりたい放題。健司は働いている映画会社のメイク室に美雪を案内して、化粧で色を付けるようにしました。そして、美雪にいわれるがままに、いろいろなところへ連れていく健司。

健司は、美雪とのことをそのまま映画の脚本にまとめあげていきます。いつしか、健司は自ら美雪に見せたい景色をいろいろと案内するようになっていきます。

そして、ついに「ずっとそばにいてほしい」と告げますが、いつも映画の外から自分を見ていてくれた健司に会いたくて飛び出してきたけれど、人の温もりに触れると私は消えてしまうと言い残して、健司の元を去っていくのでした。

美雪は健司に片思いの映画会社社長の娘、塔子(本田翼)に、健司の事を頼むと託します。しかし、塔子は健司に美雪の本当の想いを伝え、そけを知った健司は美雪のいるロマンス劇場へ向かいました。そして、美雪は、最後に私を抱きしめて欲しいと言います。健司の手が美雪の肩に伸び・・・牧野老人の脚本はそこで終わっていました。

老人の自宅で、孫が昔の写真を懐かしそうに眺めていると、そこへ老人の危篤の電話が入ります。孫と思われていたのは、実はずっとずっとお互いに触れることなく、でも本当に幸福な日々を一緒に過ごしてきた美雪だったのです。

牧野健司は、美雪を抱くことをこらえて、それでもずっとそばにいてくれさえすればいいという選択をしたのでした。病院に駆け付けた美雪は、初めて健司の体に触れ、そして健司の命の灯と共に静かに消えていきました・・・

初めのうちは、美雪のハチャメチャに笑い、健司の男として何とも情けないところが目立ちます。しかし、だんだん、この絶対に成就できない恋の応援団員になっていく自分に気がつきます。でも、どう考えても結末は、最後は消えていく姫を追いかける王子しかありません。

健司が美雪に触れようとした瞬間に、話は現実に戻って年老いた老人(名優・加藤剛さんには申し訳ありませんが)のアップ・・・って、いやいやそりゃないでしょうと、がっかりさせておいて、さらに次の瞬間、病室に見舞いに来た「孫」が美雪!! というのは、「いゃーその手があったか」という感じです。

綾瀬・坂口のカップルのイメージから、しだいに坂口だけが年老いていく回想をおり込んでいくことで、綾瀬・加藤のカップルになっても見ていて気持ちが途切れない工夫がうまい。あまりにもプラトニックで、究極的な無償の愛とでも言えるような荒唐無稽な話ですが、このクライマックスは涙無しでは見られませんでした。全編にわたって、たくさんの色彩をこれでもかっていうくらい散りばめた画面も見所でしょうか。