2019年2月11日月曜日

ICHI (2008)

勝新太郎の当たり役である座頭市を女性に置き換えたリメイク作品・・・ていうより、座頭市にリスペクトして「目が見えない剣術使いの女性」を描いた映画。

監督は、曽利文彦。この人は「ビンポン」で映画監督デヴューし、実写版「あしたのジョー」、最近では「鋼の錬金術師」を監督した、TBS出身の主としてCGクリエイターとして活躍している。

VFX系の人は、時にその創造力に頼り過ぎるきらいがあるんですが、現在のコンピューティング技術をもってしても、あくまでも映画で演技をしているのは生身の俳優であり、その魅力以上のものではありません。

「ピンポン」は元々の原作漫画がよくできていて、実写化にあたって現実に演じきれない部分をVFXでうまくカバーしていたと思いました。しかし、今回は原案といえる座頭市のキャラクターはあっても、ストーリーはオリジナルに近い。

いくつか目を引く演出はあり、殺陣シーンでのVFXも多少の見所なんですが、ストーリーの進行自体が当たり前すぎて脚本の詰めの甘さみたいなものが目立つのが残念です。

瞽女は、主として北陸地方を中心に、明治時代まで三味線を持ち歩き門付巡業をした盲目の女旅芸人で、売春をおこなうこともありました。一人で門付をするはなれ瞽女の市(綾瀬はるか)は、自分に剣術を教えてくれた恩人(父親?)を探す旅をしています。

折れた剣で母を失明させたことから、腕は確かだが剣を抜くことができなくなった浪人の十馬(大沢たかお)は、実際はチンピラを市が斬ったのですが、勘違いから宿場を仕切っている白河組の用心棒に雇われます。

宿場の近くの岩場に本拠をおく悪党の万鬼党の首領の万鬼(中村獅童)は、元々出世が期待されていた武士ですが、顔半分の火傷のため落ちぶれていました。

市は万鬼が探している人物を知っているのでないかと考え、一人万鬼党に乗り込みますが、逆に捕まってしまいます。十馬は市を助け出し、白河組二代目の虎次(窪塚洋介)らと共に万鬼党との決戦に挑みます。

どうしても剣が抜けない十馬ですが、いよいよ万鬼との一騎打ちとなり剣を抜くことができました。しかし、相討ちとなり十馬は倒れます。市が駆け付け、立ち上がった万鬼を倒します。十馬のおかげで、生きる意味を少しだけ見出した市は、また旅を続けるのでした。

という感じの話なんですが、見るべきものは綾瀬はるかの一点。勝新太郎と違いずっと眼を開いている演技なんで、これはこれで大変。また、アクションもこなせることを証明してみせます。ただし、目を動かせない、表情もほとんど変えない、セリフもほとんどない寡黙な役回りでは、汚い格好をしていても綾瀬はるかは可愛い以上にはなりません。

実質的な主役とも言えなくはない大沢たかおも、おどおどした間抜けな面が強調され過ぎていて、最後にすっと剣を抜いて戦うのは「かっこいい」けど違和感があります。そもそも、市抜きでの最終決戦というのもがっかり。最後に手負いの万鬼を倒しても、なんかなぁという感じ。

綾瀬はるかというと、どうしても「天然」的な印象があり、またそれをうまく利用したコメディエンヌとしての役柄が多いので、こういうシリアスな演技はじっくり見るのには貴重なんですが、監督・脚本が平凡で映画全体としては低評価と言わざるをえないのは残念です。