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2019年2月3日日曜日

是枝裕和 #8 奇跡 (2011)

「奇跡」は、是枝監督の第8作目の劇場映画で、今回はこどもたちが主役。映画のモチーフは九州新幹線開通であり、JRからオファーがあり制作されました。出演陣は、是枝作品に2回以上登場の俳優が多く、「是枝組」と呼べるカラーが形成されてきた感じがします。

博多に住んでいた兄弟、航一(前田航基)と龍之介(前田旺志郎)は両親(オダギリジョー、大塚寧々)の離婚により、博多と鹿児島に分かれて住んでいます。

再び家族4人で暮らすことを願っている航一は、ある日、開通した新幹線の上り下りの一番列車がすれ違う瞬間に奇跡がおこり、何でも望みが叶うという噂を耳にします。

航一は龍之介にに電話して、お互いその瞬間を共有して一緒に暮らそうと提案し、二人の友人も巻き込んだ計画がスタートしました。

航一と龍之介は、こども漫才「まえだまえだ」で活躍する実際の兄弟。龍之介の友人には、樹木希林の孫、内田伽羅。その母親役で夏川結衣。まだ子役時代の橋本環奈、平祐奈なども登場します。航一の祖父母は、樹木希林、橋爪功。祖父の友人に原田芳雄。航一の通う学校の先生に、阿部寛、長澤まさみ。

定評のある俳優陣が、ほとんど素人みたいな子供たちの周りを固めて、映画としての完成度を高めているわけで、それぞれが多くの出番があるわけではありませんが、チームみたいな結束力を感じます。

子役の扱いがうまいことは定評ある是枝ですから、今回も例によって、こどもたちには脚本は渡さずに撮影に臨んだそうです。「学芸会」のようにならない、こどもたちの無理のない演技(?)は、一つの目標に向かって突っ走っていく(本来無理がある)設定を本物らしく見せることに成功していると思います。

こどもたちを泊めてあげるおばあさんの役で、歌手のりりぃが登場したところは懐かしくも、ずいぶんと年を取ったと思いました。いずれにせよ、いきなりたくさんの見知らぬこどもを泊めるなんて普通は無い。また、ぴったりと新幹線がすれ違う時間と場所を事前に知るのも、それ自体が相当奇跡的なことです。

それらを「嘘」と思ってしまえば、この映画は成立しない。本来、映画なんて嘘を描いているようなもんだと思えば、それを楽しむことができるのかもしれません。

奇跡の瞬間・・・結局、航一は4人家族が元の生活に戻るという願いをしませんでした。この小さな冒険の中で、自分だけの思いを周りに押し付けることが幸せではないと気がついたわけで、航一は少し大人になったわけです。