開頭一番、美しい花々が画面に溢れかえり、木村のカメラの見事な映像にうなります。そして、昭和12年を舞台にして、雑巾がけをする高倉健が早速登場します。
この瞬間の違和感・・・
う~ん、どうしたらいいんでしょうか。健さんとしては長髪でポマードで固めた髪型。会社社長ですから、スーツでびしっと決めてるんですよ。また、よー喋るんですね。
それと、なんで、なんでしょうか。メイン・キャストですけど、任侠物で「仲間」だった久しぶりの共演となる富司純子は女優の格としてはいいとして、もう一人の主役が板東英二ってのは・・・板東英二を俳優と呼ぶのには、かなり抵抗があります。何故ここに「素人」が選ばれるんですかね。
新しい健さんの映画だから、ってことで納得できる方もいるかもしれませんが、やはりここで健さんが演じているのは、やはり「不器用に実直」にしか生きられない男です。箱が変わっても、健さんは健さんなんですが、どうにもその箱の作りが甘すぎます。
向田邦子ですから、基本的には変則的なドラマになる人間関係があって、コメディ要素を盛り込みながらストーリーが進行していきます。へらへら、にやにやする健さんが見れるのはこの映画の価値かもしれませんけど。
戦友の門倉(高倉健)と水田(板東英二)は、家族以上の付き合い。軍次産業特需で景気が良い社長の門倉は、何かにつけて水田一家の面倒を見ていて、水田はそれを遠慮なく受けている。
門倉は水田の妻、たみ(富司純子)に惚れているのだが、水田も感じているが、それを理由に門倉に世話になってばかりいることを正当化しているようだ。水田が芸者に入れあげてたみに相談された門倉は、芸者を囲って水田から遠ざけます。
それをきっかけに二人の友情は少しずつ歪んでしまい、たみへの思いも深まることを恐れた門倉は、水田に絶交と言わせるように仕向けるのです。
一番、役がはまっているのは、健さんの奥さん役の宮本信子。門倉のたみに対する思いはわかっていて、それを出したり出さなかったりしながら、門倉や水田一家に接するあたりの微妙な機微を、表情や仕草で演じる所はさすがです。
狛犬の阿と吽になぞらえた男同士の友情と、プラトニックな三角関係をうまく作り上げた向田ワールドはさすがです。配役を考えなければ、映画としての完成度はそれなりにあると思いました。