グスタフ・マーラーの交響曲以外の作品は、ほぼ声楽曲のみと言えます。
これらのうち、初期の「3つの歌曲」、「若き日の歌 (Lieder und Gesänge aus der Jugendzeit、全14曲)」についてはピアノ伴奏となっています。
クラウディオ・アバドでマーラーをコンプリートしようと思うと、当然はずれてしまうのはしかたがない。もっとも、バーンスタインのように自らピアノを弾いて伴奏してしまうケースもあります。
それら以外は、オーケストラ伴奏譜とピアノ伴奏譜の両方をマーラー自身が、ほぼ同時進行で作っている。
カンタータ「嘆きの歌 (Das klagende Lied)」
さすらう若人の歌 (Lieder eines fahrenden Gesellen、全4曲)
少年の魔法の角笛 (Des Knaben Wunderhorn、全12曲)
リュッケルトの詩による5つの歌曲 (Rückert-Lieder、全5曲)
亡き子をしのぶ歌 (Kindertotenlieder、全5曲)
交響曲「大地の歌 (Das Lieder von der Erde、全6曲)」
アバドは「嘆きの歌」と「さすらう若人の歌」は、現在までは登場していません。「少年の魔法の角笛」はベルリンフィル、フォン・オッター、クヴァストホフで収録しました。「大地の歌」はベルリンフィルのデジタル・コンサートで、フォン・オッター、カウフマンで正規配信。
リュッケルト歌曲集は、ルツェルン音楽祭で2009年に交響曲第4番と共に演奏され、映像が遺されました。独唱はマグダレーナ・コジェナー(サイモン・ラトルの奥さん)でした。音声だけだと悪くはないのですが、映像だとコジェナーの身振り・手振り・表情がやや大袈裟な感じで、ちょっとなと思ってしまう。
CDとしては、1981年にシカゴ交響楽団と交響曲第1番収録の際に、ハンナ・シュバルツの独唱で収録し、後に交響曲第5番、あるいは第6番のCDに追加されましたが、現在入手可能なボックスからは除外されています。
「亡き子をしのぶ歌」は、1992年にベルリンフィル、マルヤーナ・リポフシェクで録音があります。リポフシェクは、抑制が効いた染み入るような歌唱が素晴らしい。リュッケルト歌曲集の白眉である「私はこの世に捨てられて」私はこの世に捨てられて」も歌われています。
ただ残念なのは、現代音楽作曲家のノーノの曲とのカップリングで、メインのノーノの方がなんだかよくわからないせいか、アルバムとしてぱっとしない。
さて、アバドのマーラー作品の落穂拾い・・・隅々まで探して見ると、後は残ったのは交響曲第10番だけということになりました。
この曲は第1楽章のみの未完成曲で、後にマーラーが遺したスケッチを元に補筆完成版がありますが(クック版が有名)、そもそも第1楽章だってマーラー自身が完成したとは考えていたわけではないでしょう。
アバドは、1985年にウィーンフィルで第1楽章のみを収録しています。また、2011年5月になって、ベルリンフィルとの演奏が「大地の歌」と共に配信されました。
そして同じ2011年8月に、ルツェルン音楽祭のオープニングでも取り上げたものが配信でのみ公開されています。これは、同年に発生した日本の東日本大震災の鎮魂の目的での演奏でした。