2005年のルツェルン音楽祭で、クラウディオ・アバドと彼のスーパー・オーケストラが挑んだのはマーラーの交響曲第7番。
楽章の説明に「夜の音楽(nachtmusik)」と記されていることから、全体が「夜の歌」と呼ばれるようですが、マーラー自身が副題としてつけたわけではない。
出だしは、確かに夜っぽい。テノール・ホルンと呼ばれる、通常のホルンとチューバの中間のような楽器により、やや不穏なメロディから始まります。でも、その後からマーラーらしいかっこいいメインテーマが出てくると、夜は一気に吹き飛んで、元気な重厚なマーラー節です。
あえて夜のイメージをかぶせて考えると、「禿山の一夜」のようなさまざまな魔物の饗宴を想像してしまうのも無理が無いところかと。管楽器と弦楽器が交互にテーマを変奏していくような感じですが、切り替わりで気持ち悪くない程度のテンポの揺れが感じられるのも面白い。
マーラーはいろいろなかわった楽器を使うことでも有名ですが、この曲でもっとも特徴的なのは、第2楽章以後に出てくるギターとマンドリン。いやいや、オーケストラにギター? マンドリン? と思いますよね。
どう考えても、音量が無いのでマーラーの大音量楽曲の中では埋もれるだけだと。しかし、当然と言えば当然なのは、これらが出てくる場面ではしっかりと全体の楽器はおとなしくなってちゃんとギターもマンドリンも聞こえるんですね。この時だけは、交響曲というよりは室内楽のような雰囲気です。
このようないろいろなものが出てきて、こどもがおもちゃ箱をひっくり返したような何でもありみたいなところがマーラーの魅力の根底にあるんですね。
病気から復活して安定してきたアバドは絶好調で、お馴染みになってきたスター揃いのオケの面々も、余裕を感じられる演奏です。