2019年10月18日金曜日

Claudio Abbado LFO / Mahler Symphony #1 (2009)

さて、巨人です。

きょ、にアクセントを持ってくるとジャイアンツ。じん、を持ち上げると「進撃の巨人」のような、でっかい人のことになる。この場合は、当然ながら後者。

アバドのルツェルンでのマーラー・チクルスは、2009年には第4番に続いて交響曲第1番も演奏しました。演奏する側からすると、演目がマーラーと決まると、かなりのストレスらしい。それを同一期間に2曲というのですからさぞかし大変だっただろうと。

マーラーの交響曲には副題がついていることが多い。例えば第8番は「千人の交響曲」と呼ばれますが、実際マーラーが指揮をした初演の時にオーケストラと合唱で千人を必要としたために興業側がつけたもの。

実際に、マーラーが正式に副題をつけたというのは無い。この第1番も「巨人」と呼ばれますが、いろいろ改訂している中で、一時「巨人」と呼んだらしいのですが、最終稿では削除されています。

何しろまだ青年指揮者の最初の交響曲ですから、いろいろと試行錯誤はあって当然で、そもそも最初は「交響詩」として発表し、騒音をまき散らす音楽として不評を買っています。

その後第2楽章は削除されていますが、「花の章(Blumine)」として今では独立して演奏されることがあります。また第1楽章の伸びやかな主題は「さすらう若人の歌」の第2曲をそっくり転用しています。このあたりは巨人というより、さわやかな牧場かどこかのカッコーの鳴き声がする朝の様子を想像するような感じ。

後半に行くにしたがって、多少は「ここが巨人かな?」みたいなところはあるんですが、最終第4楽章が爆発的に始まるあたりで最高潮に達します。もうアバドは大丈夫かと心配したくなるくらい腕を振り回します。最後は勝利?の喜び溢れる雰囲気で終了。

オーケストラの面々も、脚を踏み鳴らしてアバドを讃えるところが嬉しいじゃないですか。いゃ~、いつもながら、アバドのルツェルンでマーラーにはまってよかったというところでした。

ちなみにこのディスクには、これまたお気に入りのユジャ・ワンでプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番も入っています。これがまたいいんですね。小柄なユジャのどこからこのパワーがでてくるのかという、強靭な打鍵力は見所です。