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2019年12月22日日曜日

Otto Klemperer / Mahler Symphony #7 (1968)

ヘンな演奏ばかり探しているように思われるでしょうけど(実際そうなんですが)、楽譜通りに演奏することが前提のクラシック音楽では、本来は皆同じ音楽になるはず。ところが、指揮者のテンポ設定、音の強弱の付け方など、楽曲の解釈の仕方によっては、これが同じ曲? と思うほど変化が出てきます。

それが、最初からアドリブ主体のジャズとは違う、クラシック音楽の楽しみの一つ。つまりヘンな演奏を楽しむことをやめたら、それぞれの曲に対して1枚のCDを持っていれば事足りることになってしまいます。

マーラーの交響曲は、作曲者自身が指揮者が好き勝手に演奏することを熟知していたので、事細かに演奏の仕方を指定した・・・はずだったのですが、けっこうチャレンジャーが多くて、意外に個性的な演奏があるのも楽しみの一つです。

とにかく、遅い。何でこんなに遅いのと、驚く代表的なものとして知られているのがクレンペラーの交響曲第7番です。

オットー・クレンペラーは、直にマーラーと仲良しだった一人。マーラーに推薦文を書いてもらったお陰で、指揮者人生が開けたということで、生涯感謝し続けていました。ただし、マーラーの曲の演奏となると、好き嫌いがはっきりしていて、嫌なものはやらない。若い頃は快速演奏もずいぶんやってますが、年を取るとゆっくりした重厚さを強く出す演奏が増え、残っているマーラーは60年代以降のもので数曲。

その中で、際立って特徴的なヘンな演奏が第7番。演奏時間は、各楽章で27分47秒、22分8秒、10分28秒、15分46秒、24分25秒で、全部合わせると100分34秒です。

実は、この曲は標準的には80分程度。バーンスタインのDG盤(NYP)では、21分38秒、17分8秒、10分32秒、14分47秒、18分40秒で、全体で82分45秒です。アバドのシカゴ響盤だと、21分20秒、16分35秒、8分53秒、14分、17分42秒で、全部で78分30秒。爆演で紹介したネーメ・ヤルヴィだと70分7秒、ゆっくり目が多いシノーポリは87分36秒。

クレンペラーの7番をはなから聴いていくと、遅いのはがまんできるのですが、全体のテンポが似たような速度なので、トータルにめりはりが無くなってしまった印象です。ゆっくりなので、一つ一つの音符がはっきりして、重厚な冷静さみたいな感じが功を奏している部分もありますが、音量が上がる場面でも盛り上がりはまったく感じられません。

この曲は、マーラーの中では失敗作という評価がされることも多いのは、「夜の音楽」という副題がつくにもかかわらず、最終楽章のどんちゃん騒ぎが浮き上がってしまうところにあります。

クレンペラーは、全体を通して徹底的に遅くすることで、最終楽章だけが浮き立つことを防ぎたかったという点では成功しているのかもしれませんが、そのために払った犠牲が大きすぎると言わざるをえません。