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2019年12月9日月曜日

Gustavo Dudamel / Mahler Symphony #8 (2012)

グスタフ・マーラーが活躍したのは、19世紀末から20世紀初頭。百年ちょっと前のことで、まだクラシック音楽としてはその演奏史は長くはありません。

録音という技術とSPレコードが発明されたのもマーラーの時代。戦前はワルター、クレンペラーのように直接マーラーの薫陶をうけた者が遺産を受け継いで奮闘しましたが、長大なマーラーの音楽は、SPレコードに収録するのは困難で、ほとんど敬遠されていたと言ってよいでしょう。

戦後にLPレコードが開発されたことは、マーラーの音楽を再認識するきっかけの一つになり、バーンスタインのようなマーラー命のような指揮者の登場により、一気に人気に火が付いたという認識はあながち間違いではありません。

他にクーベリック、テンシュテット、アバド、インバル、マゼール、ブーレーズ、ハイティンクなどなど、次から次へとマーラーを得意とする指揮者が登場してきました。

続くCD世代は全集も簡単にまとめられるようになり、サイモン・ラトル、リッカルド・シャイー、パーボ・ヤルヴィ、マリス・ヤンソンスらになるんでしょうか。そして、その次は・・・

交響曲全集になりそうな若手の注目株の一人が、グスターボ・ドゥダメル辺りじゃないかと思います。1981年生まれで、ベネズエラ出身。まだ40才前。

ベネズエラというと南米の国でクラシックと関係なさそうに思いますが、ベネズエラの英雄シモン・ボリバルの名を冠したユース・オーケストラは世界的に有名で、ドゥダメルはわずか18歳で音楽監督を務めました。

ベルリンフィル時代のアバド、そして後任のラトルとも交流があり、2004年にはマーラー国際指揮者コンクールで優勝しています。2009年にロサンゼルス・フィルの音楽監督に就任し、ベルリンフィルにもたびたび客演するという輝かしい来歴を持っています。

マーラーのものだけピックアップしてみると、すでに以下の5つが見つかります。
2007年 第5番 シモン・ボリバル・ユース管弦楽団
2009年 第1番 ロサンゼルス・フィルハーモニー (映像作品)
2012年 第8番 ロサンゼルス・フィル、シモン・ボリバル交響楽団 (映像作品)
2013年 第9番 ロサンゼルス・フィル
2014年 第7番 シモン・ボリバル交響楽団

ベートーヴェンの交響曲も、現在までに第2番以外は発売されています。2010年のベルリンフィルのニュー・イヤー・コンサートのDVDを持っていますが、ガランチャ目当てで買ったので借りてきた猫のような印象でした。ユジャ・ワンのラフマニノフは3番はいきの良い演奏でした。

もじゃもじゃ頭で、顔はデカくて陽気な感じ。YouTubeで見られるバーンスタインの「マンボ」のような演奏が良く似合うのですが、一点してマーラーは実に情感豊かな演奏を聴かせてくれます。

それにしても凄い、凄過ぎるのが第8番の映像。通称「千人の交響曲」と呼んでますが、これはロサンゼルス・フィルだけでなく、シモン・ボリバル交響楽団が合同で演奏・・・って、普通の2倍の人数のオーケストラです。

そして、合唱隊が、千人じゃきかないんじゃないかというくらいうじゃうじゃいる(実際はオケを含めて1400人らしい)。よく集められたというより、よくこれだ並べられる会場があったもんだと。


さすがに、ソロイストが埋もれ気味だし、個々の楽器の音もわかりにくい。多けりゃいいってもんじゃないのいい見本ではあるんですが、その爆発力というか、発せられる膨大なエネルギーはマーラーが本来意図したものなんだろうと思えるわけです。

もともと、第8番は既存の交響曲の概念から外れ過ぎで、演奏者も大勢過ぎて曲としての出来がいまいちですからマーラーの代表作とはいえないと思います。むしろ、イベント性を重視して聴くべきところがあるので、ドゥダメルは若いのに何とかまとめ上げたと褒めていいんじゃないでしょうか。

独唱者としては、アバドのマーラーでおなじみのラーションが嬉しい。「マリア崇拝の博士」はファウストだと思いますが、テノールのフリッツは、怪しげな感じがぷんぷん。「栄光の聖母」のダフィは、いつ登場するのかと思っていたら、何とまだこんな場所が残っていたかという感じ。

ちなみにソプラノのジャコモが、渡辺直美さんに見えてしまうのは自分だけ?