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2021年1月15日金曜日

ナバロンの要塞 (1961)

アクション戦争物の原作者として有名なのは、ジャック・ヒギンズとアリステア・マクリーン。マクリーンの作品の中でも、特に名が知れているのが「ナバロンの要塞」じゃないでしょぅか。

それを映画化したこの作品は、登場する俳優も豪華で、2時間半の中で作戦そのものを描くだけでなく、登場人物の背景も適度に含ませることで、映画としての奥行きを深くしています。


監督はアクション系戦争物を得意とするJ・リー・トンプソン。脚本は「真昼の決闘」、「戦場にかける橋」のカール・フォアマン。音楽はTV「ローハイド」、ジョン・ウェインの多くの西部劇にスコアを提供したディミトリ・ティオムキンです。

舞台となるのは、地中海、ギリシャとトルコの間にあるナバロン島。映画内で示される地図では、ロードス島の北西に位置していますが、これは完全に架空の島。近くのケロス島(これも実在しない)に取り残された二千名のイギリス兵をドイツ軍から守り帰還させるために6隻の駆逐艦を送ることになりました。

問題はナバロン島の絶壁の上にそびえるドイツ軍の要塞で、超巨大な大砲を設置し、通過する船を簡単に沈めてしまうことができるのです。そこで、ジェンセン准将は、特殊任務に長けたマロリー大尉(グレゴリー・ペック)に海から絶壁を登り、大砲を破壊するよう命令します。

不可能に近いこの作戦には、フランクリン少佐(アンソニー・クエイル)が同行し、少佐と旧知の爆発物の専門家であるミラー伍長(デヴィッド・ニーヴン)、ギリシャ出身でマロリーが信頼するスタブロス(アンソニー・クイン)、ナイフの達人ブラウン(スタンリー・ベイカー)、父親が現地のレジスタンスであるパパディモス(ジェームズ・ダーレン)の計6名で臨むことになりました。

准将は、彼らを見送って「成功する見込みは無い」と言い、「失うのには惜しい連中だが、私は任務の伝達者に過ぎない」と部下を死地に送ることを自ら納得させようとするのです。

6人は漁船で何とか島の崖にとりつきますが、悪天候の中で、フランクリンが滑落し足を骨折。担架で運びながら進みますが、フランクリンの足は感染し状態が悪くなる一方。足手まといを恐れたフランクリンは自殺しようとしますが、マロリーは「作戦は中止。上陸部隊が来るので心配ない」と嘘をついて安心させます。

遺跡で協力してくれるレジスタンスの女性二人と合流しますが、一人はパパディモスの姉のマリア(イレーネ・パパス)、そしてもう一人は拷問されて声が出なくなったアンナ(ジア・スカラ)でした。しかし、彼らの行動は敵に簡単に察知されていて、要塞のあるふもとの町で、彼らはドイツ軍に包囲され逮捕されます。

隙をついて脱出する時に、マロリーはフランクリンだけは置いていくことにしました。マロリーは仲間に、フランクリンはこの後自白剤を使って尋問を受けるだろうが、嘘の上陸作戦を自白するだろうと説明します。ミラーはフランクリンを見捨てたと、マロリーを強く責めるのでした。

いよいよ要塞に潜入するという時になって、爆弾の多くが使い物にならない状態であることが発覚し、ミラーはこの中にドイツ軍に情報を提供している者がいると言い出します。拷問の怖さからアンナの仕業であったことがわかり、ミラーはマロリーに処分するよう迫ります。しかし、マロリーが銃の引き金を引こうとする前に、アンナを撃ったのはマリアでした。

嘘の上陸作戦のため大半のドイツ軍は反対側の海岸に移動します。ブラウンとマリアは脱出用の船を奪いに行き、残存部隊はスタブロスとパハディモスが囮になって引き付け、手薄になった隙にマロリーとミラーは砲台に侵入し爆薬をセットするのです。

ギリギリのところで要塞は爆発・崩壊し、駆逐艦は砲撃を免れ、マロリーとミラーはマリアが操舵する船に拾い上げられますが、ブラウンは死亡しており、またスタブロスからパパディモスも死んだことを告げられるのでした。マロリーとミラーは駆逐艦で帰途に就き、スタブロスとマリアは戦わねばならないと言って島に戻っていくのでした。

コンピュータ処理など思いもよらない時代ですから、あくまでも手作りの映像ですが、巨大ブールで嵐に揺れる船を再現したり、イギリス軍・ギリシャ軍全面支援による大量の重火器の登場など迫力においては今のCGに負けていません。

基本的には、一見不可能と思える任務をこなす元祖ミッション・インポッシブルな話ですが、ブラウンはどこか人を殺すことにはためらいがあるようですし、ミラーも直接的な殺人はしたくないために出世は断っている。マロリーの温情が仇になって妻子を失ったスタブロスは、マロリーには戦争が終わったら殺しに来ると思われている。もちろんアンナも仲間を裏切っている後ろめたさがある。

誰もが好んで戦争に参加しているわけではなく、国のためという大義名分のもとに命の危険を冒している。しかし、彼らは一人の人間であり、それぞれ抱えている物は違うのです。それでも、一つの目的に向かって必死に協力した時、やっとお互いを分かり合えるところがあることを言いたいのかもしれません。

アクション・シーンだけで言えば、マクリーン原作映画としては「荒鷲の要塞」の方が、スリル&サスペンスは優っているように思いますが、こういった登場人物の心の葛藤を含ませた分、ドラマとしての面白みが出ています。あと、イギリス人は英語、ギリシャ人はギリシャ語、ドイツ人はドイツ語を基本的に話すのは当たり前ですが、好感が持てるところです。

マクリーンは、1968年にマロリー、ミラーらが再登場する続編「ナバロンの嵐」を発表し、これも映画化されています。マロリーにはロバート・ショー、そして共同作戦をとるアメリカ軍中佐にハリソン・フォードが登場しています。