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2021年9月13日月曜日

12モンキーズ (1995)

1962年のフランスの約30分の短編映画は、大変に風変わりでした。タイトルは「La Jetee (ラ・ジュテ)」といい監督はクリス・マイケル。フォトロマンと呼ばれる手法を用いていて、簡単に言えば静止画像を順に見せていく紙芝居のようなもの。荒廃した未来から来た男が現代の女に恋して、過去の自分の前で死んでしまうという話(ネットで視聴可能)。

一方、こちらの映画は、「未来世紀ブラジル」のテリー・ギリアムが監督し、映画の冒頭で「La Jetee」にインスパイアされたことが示されています。「ブラジル」のようなブラック・ユーモアは封印され、アルゼンチン・タンゴの響きと、ルイ・アームストロングの歌声が全体の雰囲気づくりに一役買っています。

2035年。1996年に12モンキーズが起こしたウィルス散布により、世界のほとんどの人類が死亡し、何とか生き残った1%の人々はウイルスを避けて地下での生活を余儀なくされていました。囚人のジェームス・コール(ブルース・ウィリス)は、減刑と引き換えに過去に戻って、ワクチンを作るためにウイルスを採取することになります。

ところが、タイム・スリップしたのは1990年。コールは妄想癖のある患者として精神病院に収容され、コールは女医のキャサリン・ライリー(マデリーン・ストウ)と患者のジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)と知り合い、ゴインズに人類のほとんどが死ぬ話をします。ゴインズの手引きで脱走しようとして捕まりますが、未来に一度引き戻されます。

再度、調査を続行するように命じられたコールは、今度は1996年に送り込まれます。キャサリンを強引に同行させて、断片的な手掛かりをたどっていくと、細菌学者の父(クリストファー・プラマー)を持つゴインズが動物愛護団体として活動する12モンキーズのリーダーであることが判明します。しかし、ゴインズに面会したコールは、何が本当なのかわからなくなり混乱し、再び未来に引き戻されるのです。

キャサリンはしだいにコールの言うことが真実かもしれないと思い始め、再び姿を見せすべてが妄想だったと言うコールを連れて事実を探そうとします。ゴインズらは父親を誘拐し、動物園の檻に入れ、代わりにすべての動物を街に解き放つのでした。

12モンキーズの目的がウイルス散布ではなかったことに安心して、逃亡のため空港に向かった二人は、ジェフリーの父親の助手がウイルス散布の真犯人であることに気がつき追いますが、張り込んでいた警察によってコールは射殺され、キャサリンはちょうど空港にいてこの出来事を目撃した少年のコールを見つけるのです。助手は飛行機に乗り込み、隣になったコールを未来から送り込んだ科学者の一人と握手をするのでした。

ブルース・ウィリスは、「ダイハード」のセクシーでかっこよいイメージを自ら破壊する演技を見せますし、それにも増して超ハイテンションで切れまくるブラッド・ピットが凄すぎる。二人の名優の常軌を逸した名演があったからこそ映画としての価値が生まれていることは間違いありません。

それにしても、謎が多い映画です。何度もコールのことをボブと呼んでるくる声。未来からのアドバイスのようで、コールを見張っている何者かがいるのかもしれませんが、正体は明かされません。一度、第一次世界大戦の前線の真っ只中にタイムスリップしてしまうのも、キャサリンがコールを信じるきっかけにはなりますが、やや唐突な印象です。

ラストでも、未来の科学者が真犯人の横にいるのは、ウイルスを手に入れて未来を救うことにつながるのか、あるいは彼らが本当の意味で世界を支配するための事件の黒幕なのかと悩んでしまいます。それに、もしかしたら、すべてがこどものコールの妄想だったのかもしれません。

真犯人については、実は途中で数回登場して伏線が張られているので、最後で急に「あいつが犯人」と言われても、思い出すとなるほどなという感じ。複雑な構成の映画なので、一度見ただけではなかなか理解がしずらいのですが、タイム・スリップとタイム・ループを掛け合わせたような斬新な発想の記憶に残る名作SFと言えそうです。