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2021年9月3日金曜日

時計じかけのオレンジ (1971)

スタンリー・キューブリック監督のSF映画といえば、「2001年宇宙の旅」が全世界・全世代的にあまりにも有名。確かにSFというジャンルにこだわらず、すべての映画の傑作を選ぶランキングでも上位入賞間違いなしという傑作です。


そのせいで、この映画は「2001年」に続いて作られたSFで、おそらくキューブリック・マニアでないと忘れがちな一品ですが、さすがにキューブリックという作品に仕上がっています。

原作はアンソニー・バージェスが1962年に発表した小説。近未来のロンドンが舞台で、不良少年のアレックスが、強制的に「良い子」へ思考転換させられる、ある種のディストピア社会をブラック・ユーモアたっぷりに描きます。

いまさらストーリーを紹介するような野暮なことはしなくてもいいくらい、話としては有名ですし、ワーナー映画としてもドル箱のキューブリック作品なので、手を変え品を変えメディアを販売し続けています。

自分としては、1972年の日本での劇場公開こそ見れませんでしたが、リアルタイムに原作も読みましたし、何よりサンウド・トラックのレコードを購入して驚きの音楽にはまっていました。

音楽を担当したのはウォルター・カーロスで、1968年におそらく世界初のムーグ・シンセサイザーを使用したアルバム、「スイッチト・オン・バッハ」を作って、大ヒットを飛ばした人物。この映画では、ベートーヴェンなどを大胆に取り入れ、さらなる進化したシンセサイザー音楽を聞かせてくれました。

その一方で、アレックスが「雨に唄えば(Singin' in the Rain)」を歌いながら悪事を働くところが話題になり、エンディングでは元祖ジーン・ケリーの歌声が流れたりします。最新の未来的な音楽と、当時としては10数年前のヒット曲を織り交ぜるキューブリックのセンスは素晴らしい・・・と言いたいところですが、実は主役のマルコム・マクダウェルが何かを口ずさめと言われた歌ったからというのが面白い。

今の目からはたいしたことは無いのですが、エッチなシーンもあって、思春期の小僧としてはだいぶドキドキさせられた思い出があります。

あらためて見ると、社会に適応させるため思想改造という、根本的なテーマはけっこう怖い話です。また暴力的なシーンも多く、その影響が社会現象として問題にもなりました。