近未来の世界。遺伝子操作で人は25歳から年を取らなくなり、人口爆発を抑制するため寿命も25歳までと決められ、人々は生き延びたければ寿命につながる時間を稼ぐしかありませんでした。
時間は人同士で貸し借りができ、財布のようなガジェットに貯めておくことも可能。給料は時間として払われ、買い物も時間で行う。スラムでは、ほとんどの人々は24時間程度の時間しか持ち合わせがない生活の日々ですが、一方富裕層は巨万の時間を得て、永遠に近い命が保証されているのです。
スラムに住むウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある日捨て鉢気味の富裕層の男を時間ギャングから助けます。男は長く生きることの苦しみを話し、サラスに余命116年を与え、自ら寿命をタイム・アップさせてしまいます。一方サラスの母親(オリヴィア・ワイルド)は、予定していたバス料金(時間)の値上げで乗ることができず、サラスの目前で時間が尽きてしまうのです。
サラスは、富裕層に対する憎しみが増し、彼らの住むグリニッジと呼ばれる地域に向かいます。賭博場で大富豪のフィリップ・ワイス(ヴィンセント・カーシーザー)からポーカーで数世紀分の時間を勝ち取りますが、スラムで死んだ男に対する殺人容疑でタイムキーパー(警察のような役目を持つ時間監視員)のレイモンド・レオン(キリアン・マーフィー)に逮捕されそうになり、ワイスの娘であるシルヴィア(アマンダ・サイフリッド)を人質にして逃亡しました。
何不自由ない暮らしをしてきたシルヴィアも、特別な目的も見いだせず長寿が保証されている自分に疑問を持っていました。1日分の命のために必死になっているサラスたちの生き方にしだいに共感するのです。
二人は、一緒になって父親の時間銀行を襲撃し、スラムの人々に時間をばらまくようになります。そして、ついに父親の金庫室から100万年分の時間を強奪し、ついに命の時間システムが崩壊する可能性を引き出したのでした。
寿命をお金のように使うという発想自体はなかなか興味深く、スラムの人口が増えると物価を吊り上げ、払いきれない者が多く死ぬようにするシステムというのは恐ろしい。
しかし、母親の自分も娘も誰もが25歳で外見がストップするというのは、どうもピンとこない。富裕層は実質的に不老不死なので、富裕層の人口もどんどん増える一方で、むしろ社会的に問題なのはそっちじゃないかと思ってしまいます。
社会に反抗して犯罪に手を染める男女というのは、「ボニーとクライド」を思い出します。中盤で警察の一斉射撃を受けるシーンもあったりして、おそらくある種のオマージュなのかなと。ただ、そのにしては二人の行動は安易で、お気楽な印象は拭えません。
むしろ、スラム出身でタイム・キーパーになったレイモンドの方が、いろいろな葛藤もあるでしょうし、自分の時間を確保するより捜査を優先する実直なところが興味深く、そのために最後、サラスを目前に死んでしまうのはちょっと気の毒な感じです。
まぁ、悪い映画ではありませんが、作り込みが甘い感じは否めない。時間という制約の中での犯罪物以上とは言い難く、もう少し、人の命の価値について深く切り込んだ内容が欲しい所でしょうか。