夏季臨時休診

夏季臨時休診のお知らせ 8月14日(金)~8月19日(水)臨時休診します。

2026年8月8日土曜日

Down in the Groove (1988)


「Knocked out Loaded」に続くスランプ期のスタジオ・アルバムがこれ。それにしても、この時期のアルバム・タイトルの付け方には、ボブ・ディランの苦悩を色濃く反映したものが続くのは、何とも気持ちが重たくなります。

そもそも「Empire Burlesque」は意味の取りようによっては「(今まで王者だった)自身のパロディ」になりますし、「Knocked out Loaded」は「ベロベロに酔ってまともに歩けない」という意味のスラングです。さらに今回の「Down in the Groove」は、「絶好調」という意味でも使いますが、ここでは「マンネリ状態に落ちる」と考えた方がよさそうです。

ジャケット・デザインも前作の「女性に壺で殴られそうな男」だったり、今回も「暗い場所で一人でギターを抱えるディラン(しかもピンボケ)」という具合で、寂しさはひとしおです。80年代後半の40代のディランは、絶対的な人気者が中年期になって「何を演じてもキムタク」と批判される状況に一脈通じるものがありそうです。

また、1987年1月にディランは何らかの事故にあって右腕を傷めたらしい。本人が明かしているので間違いはなさそうですが、ギターを弾けるかわからないほどのケガだったようですが、詳しくは語っていません。それも、先行きの大きな不安材料になっていたのかもしれません。

このアルバムは、1987年春を中心に収録されていますが、かなりバラバラのセッションから寄せ集められたもので、「Death Is Not the End」は「Infidels」セッションの残り物で、「Had a Dream about You, Baby」は映画「Hearts of Fire」のサウンド・トラック用セッションから流用で、この2曲だけがディラン単独のオリジナル曲です。前作ほどではないにしても、曲ごとにバックのメンバーも変わるため、やはり統一感ではやや弱い。

「Ugliest Girl in the World」と「Silvio」の2曲は、ディランとグレイトフル・デッド専属の作詞家であるロバート・ハンターとの共作。残りの6曲は他人の曲のカバーとトラディショナルとなっていて、ディランが歌うとディランらしくなるのですが、やはり創作意欲が枯渇している状況が続いていることは明らかです。

「Death Is Not the End」はタイトルからして暗い雰囲気をたたえていますが、「どんなことがあったとしても、死は終わりではなく、その先に希望がある」という内容ですが、何しろメロディのメリハリが無く、お経みたいに聞こえる不思議な曲。一度お蔵入りになったのも頷けるのですが、女性コーラスなどを追加して多少華やかにしての復活となりました。

「Silvio」はディランらしいアップテンポのナンバーで、試練を乗り越えてタフに生きるシルヴィオが主人公の歌です。ディランは、昨年のトム・ペティとのツアー中にグレイトフル・デッドと知り合い、この年の7月に一緒にツアーを行うことになっていました。この打ち合わせやリハーサルの中で、ハンターと共作することで、創作意欲を呼び戻そうとしていたようです。

他の曲も一つ一つは悪いとは思いませんが、ディランのアルバムとしてのオリジナリティや必然性が少なく、まとまりに欠けるという批判は間違ってはいないような印象を受けます。それでも、「Empire Burlesque」からのスランプ三部作の中にも、少しずつスランプを脱するためのヒントが散見されました。ディランを深く理解していたトム・ペティやグレイトフル・デッドとのライブの中で、ヒントから正解を導き出し始めたことを思うと、ディランはライブあってのミュージシャンだと確信します。


Let's Stick Together
When Did You Leave Heaven?
Sally Sue Brown
Death Is Not the End
Had a Dream About You, Baby
Ugliest Girl in the World
Silvio
Ninety Miles an Hour (Down a Dead End Street)
Shenandoah
Rank Strangers to Me

Bob Dylan (vo, g, harmonica, key)
Mike Baird, Sly Dunbar, Myron Grombacher,
Steve Jordan, Stephen Shelton, Henry Spinetti (ds)
Eric Clapton, Steve Jones, Danny Kortchmar,
Mark Knopfler, Mick Taylor (g)
Alan Clark, Mitchell Froom, Beau Hill, Kevin Savigar (key)
Nathan East, Randy Jackson, Larry Klein, Robbie Shakespeare,
Kip Winger, Paul Simonon, Ronnie Wood (b)
Peggi Blu, Alexandra Brown, Carolyn Dennis, 
Clydie King, Full Force, Willie Green, Jr., Bobby King,
Madelyn Quebec, Pamela Quinlan (back.vo)
Jerry Garcia, Bob Weir, Brent Mydland (add.vo)

April 1983,  August 1986,  April ~ May 1987

☆☆☆☆☆・・・・・