夏季臨時休診

夏季臨時休診のお知らせ 8月14日(金)~8月19日(水)臨時休診します。

2026年8月11日火曜日

Traveling Wilburys Vol.1 (1988)


1980年代に入って、ある意味「燃え尽き症候群」となり自分に対する自信を失いスランプに陥っていたボブ・ディランは、トム・ペティやグレイトフル・デッドとのステージを重ねるうちに、少しずつ回復のためのヒントを得ていました。それらのツアーがひと段落した、1988年春に、ディランは親友ジョージ・ハリスンからの連絡を受けます。

ハリスンは、1987年11月に5年ぶりにアルバム「Cloud Nine」をリリースし、久しぶりに大ヒットとなっていました。1988年4月にアルバムから3枚目のシングルを出すにあたって、B面用に新曲を作るように言われたハリスンは、アルバムのプロデュースをしたElectric Light Orchestraのリーダー、ジェフ・リンに相談します。急なことだったので、スタジオがおさえられなかったため、ハリスンはディランのホームスタジオを借りようと電話してきたのでした。

その時、リンはロイ・オービソンのアルバム制作に携わっていたので、ハリスン、リン、そしてオービソンがディランの家に集まりました。さらにハリスンはトム・ペティにギターを預けていたので、それを取りに行ってついでにペティも誘ったという、まさに偶然がここまで重なるものかという展開です。

早速、5人で曲を作り出来上がったのが「Handle with Care」でしたが、レコード会社はあまりに出来が良かったために、同じメンバーでアルバムを作ることを提案してきました。ハリスン、ペティ、リンはワーナー・ブラザース傘下のレコード会社だったので問題はなく、ディランのコロムビア、オービソンのヴァージン・レコードにはワーナーが話をつけたようです。

さて、すぐさま5月に再び集合した5人は、わずか10日間ほどの間に共同で次から次へと曲を作っていきます。バンド名は、ハリスンのレコーディング中に機材トラブルが起こったときに「We'll bury 'em in the mix (そんなのは消しちゃえ)」と言ったことに由来して「Traveling Wilburys」と決まりました。

ここからさらに大人の遊び心で、5人はウィルベリー家の異母兄弟という設定が生まれ、ネルソン(ハリスン)、オーティス(リン)、レフティ(オービソン)、ラッキー(ディラン)、チャーリー(ペティ)という偽名まで用意して覆面アーティストとしてデヴューという流れができました・・・なんですが、サングラスを使うくらいで、ほぼそのまま5人が写真に写ってメディアに露出するし、そもそもミュージック・ビデオまで作ってますから、すぐさま正体はバレバレです。

基本的に全員がボーカルとギターが専門ですが、リンがキーボード、ペティがベースを兼任し、メンバーと馴染みのあるジム・ケルトナーがドラムスを担当しました。ちなみにケルトナーは、バスター・サイドベリーという名前の親戚のおじさん(?)の設定です。10月にアルバムが発売されると大ヒットとなり、1990年のグラミー賞では最優秀ロック・パフォーマンス賞を受賞するほど評価されたのです。

しかしTraveling Wilburysの活動はこれからという時に、残念ながらオービソンが心筋梗塞により急逝(1988年12月6日)してしまったために、グループは活動を一時休止するしかなくなります。なお1990年2月に追悼コンサートが開かれ、ボニー・レイット、ジョン・フォガティ、エミルー・ハリスらと共にザ・バーズのオリジナル・メンバーであるロジャー・マッギン、クリス・ヒルマン、デヴィッド・クロスビーが登場し、またディランもサプライズで出演しました。

偶然から生まれたからこそ、ディランにとっては気心の知れた仲間と純粋に音楽を楽しむ時間となりました。このことが、スランプ脱出の大きな一因になったわけで、事前に計画されていたらむしろプレッシャーになっていたかもしれません。ハリスンが意識的にディランを救おうとしたわけではないとしても、結果として二人の、そしてメンバー全員の素晴らしい関係性が最高の結果を生み出したという事実には拍手を送りたいところです。


Handle with Care
Dirty World
Rattled
Last Night
Not Alone Any More
Congratulations
Heading for the Light
Margarita
Tweeter and the Monkey Man
End of the Line
Maxine (bonus track)
Like a Ship (bonus track)

Nelson Wilbury (George Harrison) (g, slide guitar, vo)
Otis Wilbury (Jeff Lynne) (g, b, key, ds, vo)
Charlie T. Wilbury Jr (Tom Petty) (g, vo)
Lefty Wilbury (Roy Orbison) (g, vo)
Lucky Wilbury (Bob Dylan) (g, harmonica, vo)

Buster Sidebury (Jim Keltner) (ds)
Jim Horn (sax), Ray Cooper (perc), Ian Wallace (tom-toms)

April, May 1988

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