2011年3月8日火曜日

予防医学の有効性

今朝のニュースで、ヒブワクチンとBCGの同時摂取で亡くなった乳幼児が全国で5人という話。もちろん、因果関係がはっきりしているわけではありません。

このことについては、すでにDr.Flickerがブログで説明してくれていますので、専門外の自分が口を出すことではありませんが・・・

この手のニュースでいつも思うことは、亡くなった方が5人というところだけをクローズアップして報道するメディアの姿勢についてです。

例えばXという予防接種ワクチンがあるとします。このワクチンの摂取対象者が1万人いて、このうち予防接種をしなければ年間1000人が発症し、さらに年間100人が死亡すると仮定しましょう。

もしも、全員が予防接種した場合に、発症者は1/10になれば、年間の志望者も10人に減少します。つまり、予防接種をしなければ死亡する確率は1%、すれば0.1%になるわけです。

一方Xワクチンの副作用(どんな薬でも副作用は必ずあります)で、死亡する確率がもしもし1%であったら、接種をしてもしなくても死亡する確率は同じで、使用する意義はありません。

少なくとも、接種した場合の死亡率である0.1%よりも少ない副作用死亡率であれば、予防接種として有効ということが間違いなく言えるのではないでしょうか。

つまり、問題は死亡者数ではなく、全体でどれだけの人に使われているのか、接種しない場合の自然発生率がどのくらいなのか、その中でどのくらいのひとが重篤あるいは死亡するのかという全体像が大事と言うことです。さらに、ある一定期間における対象者集団の全体のすべての原因による死亡率との比較も是非しないといけません。

そのあたりのデータを抜きにして、是非を議論したら予防接種という公衆衛生は成立しません。製薬会社も、できるだけ早期にこのような資料を提供すべきでしょう。

やたらと死亡者数だけを取り上げるメディアのやり方は、単に恐怖を煽るだけになってしまいがちで、冷静に問題を思考することを妨げることが多々あるのではないでしょうか。

でも、亡くなったお子さんの親からすれば、そんな論理的な説明だけですんなりと事実を受け入れることはできないだろうことは、容易に想像できます。もしも、副作用的な問題であったとするならば、関係者は誠意を持って対応するしかありません。

すでに病気になった場合の治療の途中での合併症と違い、まだ病気ではない方の予防処置での問題は、より問題がデリケートです。とにかく、一日も早く、きちんとした説明が報道されることを望みます。