2022年4月7日木曜日

アクアパッツァ

 


一般にアクアパッツァと呼ばれ、日本でも人気のイタリア魚料理です。日本ではほとんど知られていなかった80年代に、イタリア修行から帰国した日高良美シェフが、積極的に紹介し、また日本人の味覚に合うようにアレンジしたものが、あっという間に全国のレストランに広まったと言われています。

正確には pesce all'acqua pazza と呼ばれます。そのまま訳せば、「奇妙な水風の魚」ということになって、何のことだかわからない。そもそもの始まりは、漁師が売れ残った魚を海水で煮て食べたとか、また、水で薄めた粗悪なワインをアクアパッツァと呼んでいたという話があります。

基本的には水で魚を煮るだけというシンプルな料理ですが、煮る時にワインを使ったり、いろいろな魚介を使って複雑な出汁のハーモニーを楽しんだりするアレンジがいろいろと知られています。

しかし、ここは日本版アクアパッツァの元祖たる日高シェフの作り方を尊重したいと思います。今でこそ自分のYouTubeチャンネルを持つようになったシェフですが、そもそもは料理人YouTuberの先達であるChef Ropiaさんのチャンネルに出演したのがきっかけ。その最初に紹介したのがアクアパッツァでした。また、家庭で作りやすい切り身の魚で作るバージョンも公開しています。

何しろ日高シェフは、自分の店の店名をアクアパッツァにしてしまうくらいですから、イタリアで出会ったこの料理のインパクトたるや相当な物だったのでしょう。当初はオリーブを入れたり、アンチョビ、ケイパーなども使っていたそうですが、次第に精錬されて今の形にたどり着いたようです。

使う魚は、主として白身なら何でもOKとのことですが、鯵などの青魚も大丈夫とのこと。YouTubeでのシェフのチョイスはチダイで、真鯛よりはちょっと小ぶり。二人で食べるなら、量としてはチダイが丁度良いし、また値段も安い(一尾300~400円)ので用意しやすい。真鯛だと値段も高く、一尾で4人前くらいでしょうか。また、大きいとフライパンに入りきらないことも起こるかもしれません。

まず魚の下処理ですが、尾やひれは料理ばさみで切り落とし、鱗を引きます。鱗は、専用の道具が無くても、包丁の背でがりがりとこすります。お腹を開いて、鰓から内臓を一気に取り出し、血合いもきれいにしたら、塩胡椒をしてしばらく寝かせます。

日本人的には魚の頭は左で腹は手前に来た方が見た目が落ち着くので、表になる方からオリーブオイルを入れたフライパンで焼きます。焦げ目がついたらひっくり返して反対側もしっかり焼き、真水をコップ1杯くらい入れます。ここからは火力は全開で、できるだけ沸騰させ続けます。

続いてアサリを入れ、さらにセミドライ・トマトを投入。生トマトを使う場合は煮崩れるので、出来上がり直前に入れます。アサリの貝が開いて、スープが煮詰まってきたらオリーブオイルを回しかけ、みじん切りのパセリを振りかけたら完成。

あれっ? 味付けは? と思ったかもしれませんが、最初に魚に振った塩と、魚と貝から出る塩気だけがこの料理の塩味です。魚介からでる深い深い旨味だけで、最高に美味しいソースになるということ。ですから、出汁が多く出る頭や骨のある尾頭付きで調理することを強くお勧めします。

もう、まったくの受け売りですが、真似っこで作っても最高に美味しく、何度でも食べたくなります。スーパーで安い尾頭付きを見つけた時に買って、下処理をして冷凍しておくと、食べたい時にいつでも作れます(今も2尾冷凍されてます)。アサリも砂抜きしたら冷凍して保存できます。