2007年11月9日金曜日

Gerry Mulligan / Night Lights

1970年代にはじまったFM放送。当時はNHK-FMと唯一の民放だったFM東京しかありませんでした。アナウンサーは局にかぶることなく、流れる曲はまるごとで、これを録音(air checkといってました)していくと、簡単にそのまんまの音楽が楽しめる。時にはアルバムを丸ごと流すことも珍しくはありませんでした。

モントルー・ジャズ・フェスティバルをはじめ、いろいろな外国人のライブがしょっちゅう流れることもありましたね。1973年のMiles Davisの日本公演とか、どぎもを抜かれました。

そういんなかで、夜0時になると城達也のナレーションからはじまるJET STREAMは企画ものの代表でした。さらにそのあとの油井正一のASPECT IN JAZZは、自分にとってのジャズ先生だったのです。ジャズの歴史に焦点を当てた企画や、いろいろな楽器の特集など、ジャズを楽しむためのエッセンスが詰まっていたのです。

そのオープニングをかざるテーマがこれ。ジェリー・マリガンの渋いバリトン・サックスの音色が奏でるPrelude In E Minor。ボサノバ調で、伴奏はギターとベースとドラム。アドリブパートでは二人のトランペットが出てきますが、ハーモニーを取ることはなく、淡々と一人一人が順番に端正なメロディを吹きつづっていきます。後半になって、はじめてトランペットがマリガンに絡みますが、いっきに夜の静かな街の様子が描かれるのでした。

タイトルでピンと来た人はなかなかのつわものです。これ、ショパンのプレリュード第4番なんですね。ジャズでクラシックの素材を使うのは、Modern Jazz QuartetのJohn LewisやDave Brubeckなどがいますが、マリガンはたぶんこれが唯一のクラシック物でしょう。油井正一の落ち着いたナレーションとマッチしていてよかったですよね。