2007年11月29日木曜日

ちょっと医師の責任を考えてみた

今日は、大学での手術の日です。昼までクリニックをやってでかけます。例によって、リウマチの患者さんで手の変形を治す手術です。大学では、手の外科専門で外来をやっている関係で、手の変形の相談が多くなるのは当たり前ですが、正直に言うと、たまには人工股関節置換術とか、人工肘関節置換術みたいな手術もしたいと思います。

でも、開業してもいまだに手術ができるだけでも贅沢は言ってはいけません。月に1回か、せいぜい2回くらいしか手術をするタイミングがないので、小さな腱鞘炎のような手術は他の先生にお願いします。でも、今週クリニックでやった腱鞘炎の手術は大学の外来に来た患者さんでした。時間がないので、他の先生に任せますと説明したら、わざわざクリニックに来ていただけました。

以前に自分が人工股関節置換術を行った方が、病棟に入院していました。どうしたのかと思ったら股関節が脱臼したとのこと。手術からはずいぶんたっているのですが、股関節のあとに膝関節の手術もしてから筋トレをほとんどしていなかったようで、股関節を支える力が無くなっていたようです。何にしても、もともと手術したのは自分ですから、責任を感じますね。

あざみ野棒屋先生は、最近のブログで、治療結果が良い人はそのまま経過を見ることができますが、治療結果が悪い人は他の医療機関に移ってしまうので、それらの患者さんを忘れて、何でもいいと言ってはいけないと、書かれています。まさにその通りです。特に手術のように人に傷をつけるようなことをやっているわけですから、おのずと責任は重くなります。

クリニックは、もちろん最新の知見をもとに医療を行うことは当然ですが、だからといって何でもできるわけではありません。限られたスタッフと設備の中では、おのずと限界があります。その中で、一定のコンセンサスの得られた治療を行い、一定の成果を出すことが求められるのです。

最近、医師会の席で、「地域に根ざした医療」とはどういうことかという話になりました。地域に密着するということは、地域の住民の方の利益を優先するということであり、それは自分のクリニックに来院した方へのサービスを充実させることではないという意見を聞きました。完全に理解できたわけではありませんが、なるほど、と思いました。

確かにサービスの充実は自分のクリニックのためであり、本来の「地域に密着する」とは違うのでしょう。クリニックの限られた条件の中では足りないものの一つが「公共へのサービス」であり、医師会はそれを行うための場を提供しているといえます。

先日、港北区医師会長と雑談をしていて、「会長は夜は公的行事がとのくらいあるの?」という質問に会長は「うーん、半分くらいかなぁ」とおっしゃっていました。自分のような平理事に比べて、すごい時間をとられているのに驚きました。

福祉センターでの医療の手伝いや、災害の時の初期医療、休日や夜間の診療所の仕事など、住民にとって必要不可欠な医療は医師会がやっているのです。大病院がやっているわけではありません。日々、意識はしていませんが無くてはならないものに携わることが「地域に密着する」ということだと理解しました。

いつものように話があっちこっちに行ってしまいましたが、最近医師としての責任をいろいろ考えることができたので、ちょっとお付き合いいただきました。もちろん、医師によって責任の取り方のスタイルには、いろいろあるはずですから、どれがいいとか悪いという話ではありません。