2008年2月7日木曜日

お金のなる木

昔、昔、小高い丘の上に金のなる木が生えていました。でも、普段は普通の葉っぱしか茂っていません。周りを通りかかった人には、普通の木にしか見えません。

近くの村に町まで作った野菜を売りに行く若者が一人いて、若者は帰りにこの木の下で休憩することを日課にしていました。今日はこのくらい売れたよ、と木に語りかけ、汗をぬぐっては小一時間もたれかかってうとうとするのです。若者は目が覚めると、家に帰って年老いた母親に、今日の成果を報告しました。母親は、病気で寝たきりになっていて元気がありません。若者はご飯の支度をして、母親に食べさせ、明日の支度をして床につくという毎日でした。

ある日、母親の具合が急に悪くなり、さすがに薬が必要になりましたが、若者には薬を買うお金がありません。若者は、いつもよりも多い野菜をかついで町にでかけていきました。しかし、今日に限って、野菜を買い求める人はまばらで、ほとんど売れません。ほとんどの売れ残った野菜をそのままかついで木の下までくると、若者は木に向かって語りかけました。「今日はほとんど残ってしまったよ。このまま持って帰っても、あしたには傷んでしまうし、もう売ることはできないから、かえって母親を心配させるだけになってしまう。だったら、ここに蒔いてあげるよ。そしたら肥やしになるだろう」若者は少しだけ木の根元を掘って、売れ残った野菜を埋めました。

次の日も売れ行きは悪く、また木の根元に野菜を埋めました。母親は、ますます元気がなくなっていきましたが、若者にはどうすることもできません。さらに次の日に、若者が木のところに来ると、いつもと違って、木が黄色く見えました。まだ秋でもないのに、葉が色づくのは変だなぁと思い、よく見ると、なんと葉っぱが小判になっていました。若者はびっくりして、手に届く高さの葉を数枚とってみました。どう見ても小判です。若者は、これさえあれば母親に薬を買うことができると思い、薬を買うのに必要な分だけをとって家に帰りました。

早速村の医者のところに行って、薬をたのんで一緒に家に連れて行き、母親を診てもらいました。よい薬の効果が出たのか、母親はみるみる元気になり、起き上がれるようになりました。その話を医者から聞いた、欲張りの別の村人がいました。欲張りの村人は、さっそく真似をすることにしました。毎日丘の上に行っては、木の根元に売りにだせない腐りかけの野菜をばらばらと蒔いてきました。

1週間くらい、そんなことをやっていると木が黄色い葉っぱをつけました。欲張りの村人は、小躍りして木に近づいていくと、木には小判がなっているので、木に登ってすべての小判の葉を篭に集めてしまいました。木は枝だけになってしまいましたが、欲張りの村人は、そのまま町に繰り出していきました。料理屋で豪勢な食事をして、芸子を呼んでは大騒ぎ。さて、勘定という段になって、篭から小判を出そうとすると、篭の中身は全て葉っぱです。欲張りの村人はびっくりして慌てましたが、他に手持ちのお金はありません。そのままお役所に突き出されてしまいました。

一方、若者は、その後は野菜の売れ行きが順調になり、毎日野菜を少しだけ残して帰ってきては、いつもの木の下に埋めるようにしました。一度は葉がすべてなくなってしまった木でしたが、いつのまにか枝一杯に葉が繁るようになり、立派な大木に戻っていきました。若者はお金が貯まって、野菜を売るためのお店を町に買うことができました。元気になった母親かお店の番をして、若者はせっせと畑を耕して、ますます多くの立派な野菜を作ることができるようになりました。美味しい野菜は、ますますよく売れて、若者は村一番のお金持ちになることができました。でも、丘の木の下で毎日野菜を埋めて、休息を取ることは忘れず毎日続けていたのでした。

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