リウマチ患者さんというのは、そんなに多いわけではない。都筑区20万人の中では1200人と考えられますが、実際のところはよくわからない。と、いうようなことを最近書いたばかりです。
しかし、先週末に来院された、リウマチを心配してこられた患者さん3人が3人とも、医者として大変怪しいと思わざるを得ないというところで、大変びっくりしていました。採血した検査結果を見て、3人とも発症したばかりの関節リウマチと確信して、正直言って驚きを禁じ得ません。
クリニックに訪れる、関節リウマチを心配している患者さんの大多数はリウマチではなく、年齢的な関節の変化や、腱鞘炎、あるいは筋肉の疲労などの原因によるあちこちの痛みである場合がほとんどなのです。
今回のように、続けて3人も初発のリウマチ患者さんが受診するというのは大変珍しい。しかも、通常の初発しやすいのは30歳代から40歳代の女性と言われているわけですが、お一人は70歳代の女性、後の二人は男性というのもびっくり。
リウマチの診断は、何か一つでも決め手になる確固たる物が無いのです。怪しいと思える物を積み重ねて、少しずつ疑いを深めていくしかありません。ですから、少しでも客観性を持たせるためには、診断のための基準をしっかりと考慮することが大切です。
診断の基準を満たさないうちは、リウマチとしか考えられないような状態の患者さんを見ても確定することはできません。そのルールを守らないと、他の医者に説明するようなときに納得してもらえません。まして、皆が認める根拠なしには、危険な副作用を伴うかもしれない薬を使うことができないのです。
一般にはアメリカのリウマチ学会が作った診断のための基準がありますが、これはすでに作られてから20年以上経過しており、現在のリウマチの診断学・治療学からは意義が薄れていることは否定できません。
そこで、自分は日本の学会が作った早期基準を利用しています。これは、確定度は多少劣るものの、疑わしい患者さんを確実に拾い上げることが可能です。
もちろん、これが絶対ではありませんし、ここにレントゲンの変化や、そして自分の経験が加わることになるわけですが、少なくとも診断するために最低満たすべき条件が含まれていると考えることができるのです。
本日は、70歳代の女性の方が検査結果を聞きに再診されました。午後からは天気も悪くなって患者さんも少なかったので、30分くらいかけてゆっくりと病気の説明をすることができました。また、薬の副作用のことなどの説明にも多くの時間を使うことができました。
でも、長く話せばいいというものではありません。一度に多くを説明しても、患者さんはすべてを理解することは難しいと思います。ですから、何回かにわけて、少しずつ理解していただけるようにすることが大切だと思っています。
そして、本日もうひとかた、医者として大変がっかりするような話をお聞きしました。別の病院で、あちこちの関節が痛いという話をしたら、リウマチでしょうと言われた患者さんです。
そこでは、試しにリウマチ薬を出しましょうと言われたそうです。飲んで効けばリウマチだし、効かなければリウマチじゃないという説明だったと言うことです。
これには、正直言って自分は激怒ものです。リウマチ薬はただの痛み止めとは違うわけで、試しに飲んでみたらというような安易な使い方ができるような薬ではありません。
いくらでも、副作用で死亡する患者さんが出るような薬なのです。使う側の覚悟と使われる側の納得が不可欠です。こういう医者が、リウマチ薬の副作用を作って、患者さんの不安をさらにあおることになっているのではないかと思います。
先日、横浜市北部の地区でリウマチを専門にうたっている数人の医者の集まりに出席しました。専門医のネットワークを作るための準備のための会合です。
専門医の中での互いの不足している部分などを補っていく方法と、専門にしていない医者に対して情報を提供していくことが議題です。今回のエピソードは、できるだけ早くこのような組織作りが必要であることをあらためて感じさせてくれました。