最初の日本でのニュースは4月24日、米疾病対策センターが豚インフルエンザに感染した患者が全米で7人見つかったと発表したわけです。この時点では豚と鳥のインフルエンザが豚の体内で混合して変異し、ヒトに感染するようになった新型インフルエンザと推定されていました。また毒性は弱く患者は回復しており、重大な懸念は無いとも伝えられていました。
翌25日になって、世界保健機関(WHO)がメキシコで3月末からインフルエンザによる60人の死亡があり、豚インフルエンザの疑いがあることを発表しました。さらに同日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」と認定しメキシコ(死者81名)とアメリカでの感染拡大も公表され、かぜん危機感が強まったのです。
4月26日には、メキシコとアメリカで非常事態宣言。WHOはメキシコとアメリカの患者から検出されたウイルスがH1N1型の新型インフルエンザであると確定しました。メキシコの死者数は103人に増加。さらにカナダ、ニュージーランドでも感染が確認されました。このあたりから、経済界へもさまざまな影響が出始めています。
4月27日にはスペイン、イギリスでの感染が確認され、メキシコの死者数は149人とさらに拡大しました。半年後を目標にワクチンの製造が開始されたと発表され、WHOは2005年に制定された新型インフルエンザの感染拡大に対する警戒フェーズを初めて、引き上げる可能性を示唆しています。
そして実際に翌4月28日早朝にWHOが緊急委員会の結果を受けて、警戒レベルをフェーズ3からフェーズ4への引き上げを発表しました。WHOの警戒レベルの定義では、フェーズ3は新型インフルエンザの人への感染が確認された段階、フェーズ4は地域社会での人から人への感染、フェーズ5はある地域における少なくとも2カ国での人から人への感染、フェーズ6は2地域以上の世界的な感染拡大(パンデミック)を意味します。
日本でも比較的迅速に国は反応して、WHOの発表から間髪をあけずに厚労相が会見を行い、事態をメディアを通じて報告。昼には総理大臣を本部長とする対策会議を招集しました。感染地域への渡航延期を勧告、また感染地域からの入国者に対する検疫体制を強化しました。メキシコでの死者数は152人となっています。
4月29日朝の時点では、イスラエル、コスタリカでも感染確認、韓国でも疑い症例が報告されています。感染が確認された、または疑われる地域は23カ国に上っています。そしてWHOはさらにフェーズ5への引き上げの可能性にも言及しました。
ここまでの感染の拡大は大変早く、世界の人の移動の広域化・高速化が想像以上に進んでいることを意味していると考えられます。それに対する、対策の推進も現状では劣っているわけではありません。比較的素早い対応が行われているものと考えられますが、対策が始まるまでに感染した人がどの程度いるかが問題です。
早ければ、日本でGW開けまでに沈静化のめどが見えてくるのではないかと思えます。しかし、その時点でも感染の拡大傾向が続く場合には、最悪ワクチンが出回るまで流行が継続する可能性があります。実際に日本国内で発生してしまった場合には、そこからの体制についてはまだ準備不足であることは否めません。
ただ、楽観的に考えられるのは、現時点ではメキシコ以外に死者がでていないこと。メキシコだけに死者が集中している理由についてはWHOも理由は不明としていますが、ウイルス自体の毒性は比較的強くないと考えられます。またメキシコに比べて、この時期日本は湿度がありますので、真冬のような通常の流行にはなりにくいのではないかと考えることができます。