関節リウマチ患者さんの数は、世の中にどれだけいるのでしょうか。教科書的には、日本で70万の患者さんがいると言われています。これは日本人1000あたり約6人という数字。
横浜市都筑区は人口約20万人ですから、1200人の患者さんがいることになります。通常は30~40歳代に発生することが多いと言われていますから、都筑区のように平均年齢が40歳以下の若い街では、なおさら多いはずです。
しかし、年間の発生数など、意外とデータが無いので、実態については不明な点が多い。自分のような「リウマチを専門にしています」と表に出しているようなクリニックにおいでになるリウマチを心配している方は、月に数人から多くても10人程度でしょうか。
その中で、実際にリウマチと診断せざるをえないのは、数ヶ月に1人くらいなものです。大多数は筋肉の疲労や、筋力低下、関節の摩耗による痛み、あるいは腱鞘炎が原因だったりするのです。
では、リウマチ専門施設である東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの外来だったらどうでしょうか。他の先生の場合は違うかもしれませんが、初診でいらっしゃった患者さんのうちリウマチと確定できる方は10人中数人程度だと思います。
専門施設ですから、他の医師がリウマチの疑いがあるとして紹介してくるケースが多いのですが、それでもそんなもんです。個人的な意見ですが、加齢による関節の痛みなどでもリウマチとして治療されているような場合が、けっこうあるのではないかと思うんです。
リウマチ反応と呼ばれている検査がありますが、これが陽性だからという理由で診断を決めている医師がけっこういる。リウマチ反応陽性は怪しむ要素の一つに過ぎず、それだけでは診断することには無理があります。
炎症の指標であるCRPという項目が高いことを理由にする場合もありますが、CRPが低くてもしっかりとリウマチの症状を持っている方もいて、それほど当てになるとは言えそうにありません。
この数年は、MMP3とか抗CCP抗体という検査ができるようになって、診断の精度が上がりましが、それでもなかなかリウマチと断定することは難しい。
もしも、本当はリウマチでないのに抗リウマチ薬と鎮痛剤を使った治療を始めたら、当然痛みの症状は落ち着く可能性があり、こういう場合は早期発見・早期治療が有効だった、という評価がされるかもしれないのです。
ですから、リウマチを専門にしている医者としては、慎重に診断し、そして大胆に治療をすることが求められているのです。日本の学会の早期基準を満たすことにより十分な疑いを持ち、アメリカの学会が決めた分類基準により確定するという流れを忘れてはならないのです。
もちろん、どうしてもこれらの基準を満たせない患者さんもいることが、事を複雑にしていることも確かです。しかし、副作用で死亡するケースも出るような薬を使うのですから、患者さんに治療のリスクを負わせるだけの根拠がしっかりしていないといけません。ですから、疑わしい場合は粘り強く繰り返し症状や検査をチェックすることが重要です。
いずれにせよ、現状では予防法のない病気で、誰でも明日からリウマチが発症する可能性はあるわけですから、ふだんからあまり心配し過ぎても疲れるだけです。関節の痛みだけでなく、腫れも伴う場合は必ず専門の医療機関に相談してください。