関節リウマチの治療薬の中で生物学的製剤と呼ばれる物が、しだいに主流になりつつあるわけですが、昨年発売になったのは2種類、ヒュミラとアクテムラです。
5年ほどまえから、関節リウマチの新薬は発売になったあとも、全例登録という制度があり、使用した場合は副作用や効果の情報を報告する義務があります。
医者にとってはたいへんめんどうな報告書を出さないと行けないのですが、おかげで実際に使用されるようになってわかるいろいろな問題点が明確になり、使う医者にとっても使われる患者さんにとっても大変意義のあるものとなっています。
発売後半年の報告が出そろって、だいたい新薬の問題点なども見え始めてきました。
ヒュミラは2001例に使用され、有害事象の発現件数は451件で、このうち重篤な物が59件、死亡例はありませんでした。これらのうち薬との因果関係があると考えられる物は、そう多くないと思われますが、それを証明することは大変難しい。
重篤な物は肺炎と帯状疱疹が主な物で、肺炎は細菌によるものですし、帯状疱疹はウィルスによるものですから、感染症が最も重大ということになります。これは、薬の性質上予想されたことであり、医者もこのへんの対応策も十分に考えていないといけないことをあらためて確認できました。
ヒュミラは先行する他の生物学的製剤と薬理作用のターゲットは一緒で、2週間に1度皮下注射で使用するものです。それに対して、アクテムラは他のものとはターゲットが異なり、他の薬に効果の少ない患者さんへの有効性が期待できる反面、まだどのような問題が起こってくるか不明な点が多いわけです。
新聞報道でも死亡例の話が出たりしていて、正確な情報の把握が重要になっています。アクテムラは4182例に使用され、副作用の発現は1208件、このうち重篤な物は204件となっています。
死亡例はこれまでに22例報告かあり、そのうち薬との因果関係が否定できない報告されている物が13例でした。
ヒュミラに比べると問題の発生頻度が高いことがわかります。特に死亡例があることは大変重要です。これは、もともと他の薬が効かない重症度高い方に比較的使用されたということがベースにあると考えられます。
内容としてはヒュミラと同じで感染症が圧倒的に多いのは、薬の性質として当然ですが、比較的肝機能障害を起こしていることも見過ごせません。これも薬理作用からくるのではないかと想像します。
関節リウマチの診断・治療はもの凄い早さで進歩している分野で、生物学的製剤の登場は患者さんにとって多くの福音をもたらしてくれるようになっていますが、これらの薬を安全に使うためには医者のより一層の努力と患者さんの理解が不可欠です。