今日は某所で少人数を相手にして関節リウマチについての講演を・・・聞きにいったんではなく、話にいきました。いやいや、こりゃまた珍しい事で。
いつも出てくるような高名な教授の方々がするような内容であれば、自分のようなただの開業医には依頼は来るわけが無い。今回は、クリニックの視点からみたリウマチ治療の選択というテーマということでした。
もともと1時間程度でという依頼だったのですが、現代リウマチ診療のエッセンスを話すだけでも1時間は軽く越えてしまいます。さらにメインテーマについて話し出せば、全部で2時間はかかってしまいそう。
できるだけ詳しいレジメを用意して、前半についてはそっちを見てねという形をとらせていただいたのですが、それでも1時間半くらいかかってしまいました。予定を大幅にオーバーして申し訳ありません。
さて、現在国内で使用できる生物学的製剤と呼ばれる強力なリウマチ治療薬は6種類。今年の3月には7番目が登場し、春には点滴製剤の皮下注射版が発売されることになっています。ますます、製薬業界は活気付いている。
患者さんにとっては、使える「武器」は多いほどよいわけですが、医者の立場としては似たようなものが多くて、すべてを使い分けるというのが難しい。どうしても、使い慣れているものに偏りがちになってしまうものです。
リウマチ専門医が、こういう新しい薬に求めるものは、どんな薬でも共通の話ではありますが、
①効果、②安全、③簡便、④経済性というところです。
できるだけ、しっかりとした効果があり、かつ副作用が少ない。使い方が簡単で、安い価格で患者・病院の負担が少ないもの。
生物学的製剤では、効果については強力で、すでにたくさんの研究結果が示されています。高い効果と強い副作用は比例する話で、そのリスクを許容できることが重要。
薬の飲み方が複雑だと、ちゃんと正しく服用できないかもしれませんし、自分で注射するのも大変かもしれません。
リウマチ薬では、3割負担の患者さんで内服薬なら月に数千円以内。ところが、生物学的製剤は3~4万円程度かかってしまいます。これは、ほとんどの患者さんにとって安いものではありません。もちろん、それだけのお金をかけるだけの効果は期待できるのですが、この値段だと自分も悩むだろうと思います。
将来的には、遺伝子医療の技術が確立されて、根本的な病気の原因が解決するかもしれません。また話題のiPS細胞による再生医療の進歩によって、変形した部分を元に戻すような方法も出てくることでしょう。
そう考えると、以前から使っていたリウマチの内服薬は「ガソリン車」みたいなもので、生物学的製剤は「ハイブリッド車」という位置づけになるのかもしれません。
現状では、「特効薬」のような「夢の薬」というかんじで、各製薬会社も力を入れていますが、未来の先進医療が確立されるまでのつなぎであることは間違いありません。ずいぶんと急激な進歩をしているところではありますが、これで満足せずまだまだ先があるということを考えておかないといけません。