70年代半ば以降、つまりスター・ウォーズが登場してからのSF映画は、特殊効果が主役となり人間は、どうも二の次になってしまった感がありました。
それ以前は、現実離れした世界を描くのに使われたのは、極めてアナログ色の強いテクニックで、例えばレイ・ハリー・ハウゼンのようにストップ・モーション・アニメなどはその代表的な手法でした。
日本では、何と言っても円谷英二の着ぐるみの怪獣と精巧なミニチュアが有名。
フラッシュ・ゴードンやバーバレラのような、エロチックSFでは、やたらのサイケ調のコスチュームやセットで非現実を強調していたものですが、これらは宇宙とか未来と言った体験できないものが前提であり、観客はまったくの別世界の話として楽しむことができるのです。
ところが、キューブリックの「2001年宇宙の旅」は、通常一般人が体験することのない世界を描いているにもかかわらず、過去から近未来までをつなぐこと、そしてあまりに当時としてはリアルな宇宙の世界を見せつけることで、観客にも擬似的な体験をさせたものでした。
そういうSF映画の中でも、人間が主役であり、そして観客はその世界を現実にも起こりうるものとして体験できた映画の一つとして「アンドロメダ...」は、隠れた名作だろうと思っているのです。
何しろ監督は名匠ロバート・ワイズ。ところが、登場する俳優はあまり有名な人はいないわけで、このあたりから人気俳優を意図的に避けて現実感を出そうという作戦かと。
時は現代、アメリカの小さい町が全滅するところから始まります。調査に参加した医師が、まるで宇宙服のような隔離服で町の中に入ってく所から、すでに見ている側はドギドキ しっぱなし。
宇宙から帰還した探査船に付着していた病原体が原因と推定されて、こういう時のために密かに作られていた秘密研究所に病原体を持ち込んで、調査と対処法の検討をすることになります。
この生物学研究所の構造がかっこいい。まさに、こんな時にはこういう研究所が必要なんだと納得してしまいます。入るための手順の複雑さ、また中でもレベルが上がるたびにより厳重な検疫体制があったりする。
そもそも主役の男性医師が、専門外にもかかわらずその研究所にいることの説明がすばらしい。オッドマン仮説というのがあって、重大な決断をするときに部外者の独身男性が良い結果をだすというもので、実はこれもまったくの作り話。
最終的には、所内で感染が発生し核爆発で食い止めるしかないということになって、物語は一気に緊張を増していくわけですが・・・とにかく、SF映画ではありますが、現実にも、特にこの映画から40年以上たった現代ではなおさら、そんなことが世界のどこかで起こっていそうな感じで、なかなか社会派的な映画としてもよく出来ているかと思います。