2013年7月27日土曜日

Alina Ibragimova / J.S.Bach Sonatas & Partitas

名立たるバイオリン奏者が、今も昔も数多くいて、自分の場合は華やかさで特に女性奏者に注目してしまうのです。

ただし、いくら名演奏とは言っても、昔の悪い音質のものを一生懸命聴くのはつらい。そこで、基本は現役の奏者のものが中心となって、もしかしたら重要な音源が抜け落ちた中途半端な聴きこみかもしれません。

となると、女性に年の話は失礼かもしれませんが、年齢順でキョンファ、ムター、ヤンセン、ハーンあたりが大御所~中堅どころという感じ。最近話題のバティアシブリは、年齢的にはハーンといっしょですが遅咲きですね。古楽系だとムローヴァ、ポッジャー。

80年代組はフィッシャー、イブラギモバ、ベネディティのかわい子ちゃん三人組。キャリア的にはフィッシャーが最も突出していて、早くも新世代女王の呼び声が高い。ベネディティは、どうもその可愛い外観が先行しすぎかも。

アリーナ・イブラギモバはロシア出身、メニューイン門下生で2000年ごろから注目され始めました。前回、最新作のシューベルトに度肝を抜かれた話を書きました。名をあげた他の人たちで、同じようなCDをだしているのはフィッシャーだけ。しかし、フィッシャーの演奏はまだまだ楽譜をなぞっているだけみたいな印象でした。

昨年リリースされたメンデルスゾーンの協奏曲は超有名曲で、ベートーヴェンで言えば「運命」みたいなもので、クラシックファンではなくてもこのメロディを聴いた事が無い人はいないというくらい。それでも、こんなメンデルスゾーンは初めてというくらい話題になりました。

しかし彼女の評価を決定付けた録音はというと、2009年のバッハの無伴奏ソナタ・バルティータ全曲でしょう。2005年に来日したときにも、はやくも一部を取り上げていて驚異的な演奏を行っています(YouTubeで見る事ができます)。

バッハの無伴奏は、バイオリン奏者にとってはエベレストみたいなもの。伴奏なしで、バイオリンの本質を描き出す、ごまかしの効かないプログラムです。これも全曲録音しているのはフィッシャーとイブラギモバだけ。

イブラギモバのバッハは、本当に素晴らしい。音の強弱、ヴィブラートの使い方、トリルの入れ方、どれをとっても嫌味が無く、聴きやすいのだけれど、深く心にしみてくるような演奏です。

人気の点でもフィッシャーを急追して、もはや実力から完全に追い抜いた感があり、新世代バイオリン女王として一押し、二押し、三押しの存在です。