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2013年8月1日木曜日

Paul Badura=Skoda / Schubert Complete Piano Sonatas

クラシック音楽を楽しむには、何かしらテーマがあったほうが聴き込んでいきやすい。まぁ、たいていは、有名な曲から入る。

例えば、ベートーヴェンの「ジャジャジャ、ジャーン(運命)」とか、ヴィバルディの「チャンッチャ、チャンッチャ、チャチャチャチャチャッ(四季)」とか、モーツァルトの「チャ、チャチャチャ、チャチャチャァ(アイネ・クライネ・ナハトムジーク)」とか。

そのうち気に入った曲の作曲家をいろいろ聴きだすわけで、交響曲、協奏曲、室内楽、器楽などのいろいろなジャンルを掘り下げてみると、さらに面白くなってくる。

ちょっと、裏技的ですが、そういった格ジャンルの編曲版で、器楽曲をオーケストラで聴いたり、交響曲を室内楽で聴いたりという楽しみ方も出てきて、このあたりからマニアの領域に入ってくるわけです。

さらに、演奏する側についても、気に入ったアーティストがだんだん増えてくるものです。一人の演奏家を追っかけて行くと、今までは興味が無かった作曲家とかにも出会えて、再びスタートラインが拡大する。

そして、最近見つけた新しいテーマが古楽。今までにも、再三書いてきましたが、今でも古楽についてはそれほどこだわりがありません。所詮、ベートーヴェンの時代と現代では、まったく同じというわけにはいかない。

古楽にこだわりすぎる演奏は自己満足的なところがあり、必ずしも今の耳で聞いて最良の音楽とは言えないかもしれないのです。

ただ、当時の楽器、つまりベートーヴェンが実際に頭の中で想像していた音を出す楽器というのは、現代楽器と違う別の新しい楽器というとらえ方ができます。ピリオト奏法と呼ばれる、当時の演奏の仕方も、曲の解釈の一つと考えましょう。

ベルリンフィルの重量戦車部隊の演奏だと「ジャジャジャ、ジャーン」ですが、古楽オケだと「チャチャチャ、チャン」という感じ。一般的には、昔の方がスピードは速かったらしい。楽器も今ほど共鳴しないのか、比較的残響の少ないたんぱくな音だったりします。

ピアノだと、古典~ロマン初期まではビアノフォルテという楽器が使われていて、ちょっとくすんだ音色にあじわいがある。今のピアノだと「ポロン」というところが、「ホロっ」という感じ。

ベートーヴェンの時代にどんどん進化して、鍵盤の数が増えて、シューベルト、シューマンくらいまではピアノフォルテの音が本来の作曲者の意図した音楽なのかもしれません。

バドゥラ=スコダは、音楽学者としても有名で、昔から原典主義的な演奏を残してきた方で、ほぼ現役最高齢といってもいいくらいのピアニストです。

90年代に録音したシューベルトのピアノ・ソナタ全集は、未完成のものもいろいろな研究をふまえて「本来あるべき姿」にして演奏しています。単独の扱いとなっている小品を、楽章の不足しているところにつけたり、途切れている楽章を自分で補筆完成させたりと、もう涙ぐましい努力が一杯です。

このあたりは、賛否両論があるところですが、少なくともシューベルトが残した音符を可能な限り耳で聞こえる形にしてくれた努力は評価されるところ。途中やめの楽章も、いかにもシューベルトらしい美しい旋律が残っていたりして、そのままゴミにするにはもったいない。

ただ、当時の楽器にあったからといって、打楽器付きピアノフォルテというもので、チンドンヤみたいな音が混ざってくるのだけはいただけない。もちろんアダージオとかで鳴らすわけではありませんが、さすがにうるさいだけと思ってしまいます。