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2014年3月2日日曜日

J.E.Gardiner / Beethoven Missa Solemnis

こういうブログで自分の好きなものを紹介するというのは、まぁ言ってみれば自己満足の世界であって、自分のためのメモみたいなものです。

本とか映画とか、あるいは音楽の場合、すべての人が同じような環境で育ってきたわけではないですから、当然人の好みは別れるもの。とりあえず、ネットの上だけでも、他人がどんな評価をしているのか探してみたりするのですが、いろんな意見が出てきて興味深い。

最近は、クラシック音楽については、指揮者ジョン・エリオット・ガーディナーを探求中なんですが、1943年生まれですから、1945年生まれのエリック・クラプトンなども同世代。もともと合唱畑の出身で、自ら学生時代の1964年にモンテベルディ合唱団を結成しました。

1968年にはモンテヴェルディ管弦楽団を組織し、1977年に古楽器を用いるEnglish Baloque Soloists (EBS) へ改組して一躍名前が知られるようになりました。バッハの4大宗教曲の録音などで、古楽ムーブメントの中心人物の一人として認識され、1989年録音のモンテヴェルディの「聖母マリアの夕べの祈り」でレコードアカデミー賞で大賞を受賞します。

そこでバロック中心だったレパートリーを古典にまで拡大し、モーツァルトの交響曲集やビルソンのフォルテピアノと組んだピアノ協奏曲全集は名盤として評価されるようになりました。

このあたりから、モダン楽器の音に慣れていた大多数の音楽ファンから古楽器に対する否定的な意見が出始めるようです。やたらは早い、音が貧弱、余情性が少ないというような意見が見られます。自分は古楽器を特に嫌っていたわけではないのですが、とりあえず昔から名盤と呼ばれているものから手を出すしかないので、古楽器のものになかなかたどり着けなかったというところでしょうか。

ガーディナーはさらに新しい時代の音楽を演奏するのに、あらたに Orchestre Révolutionnaire et Romantique (ORR) という楽団を組織します。もともとはベルリオーズの幻想交響曲を演奏したいということからスタートした楽団ですが、1991~1994年に録音したベートーヴェンの交響曲全集では、再びレコードアカデミー大賞を受賞します。

クラシック・レコード業界の巨人、ドイツ・グラモフォンはカラヤン、ベームの次のスターとしてガーディナーに目をつけ、やたらと売り出そうとしたらしい。ウィーン・フィルとの競演盤が続々出てくるようになりますが、ウィーンフィルからはだいぶ嫌われていたという話があります。

まぁ、そりゃそうでしょう。もともと畑が違いますから。その結果なのか、長年名盤を作り続けてきたグラマフォン系のArchivと2000年についに袂を分かち、バッハの約200曲ある教会カンタータを随時演奏・録音していくというArchivでの壮大なプロジェクトも途中で頓挫してしまいます。

そこでガーディナーは、自らSDGレーベルを立ち上げました。SDGでは、こつこつとカンタータを録音し、昨年ついに完結しCD56枚の全集が完成しました。さらに、過去に録音したいくつかの作品の再録音でより高い評価を得ていたり、またブラームスのユニークが交響曲全集が話題になったりしています。

さて、元々ド派手なオーケストラが苦手だった自分としては、古楽器オーケストラは「てきぱきして、一つ一つの楽器の音の粒立ちがよく、大袈裟すぎない」ところがいい感じなのです。これはまさに、古楽器に批判的な意見の裏返し。作曲家の時代の音、つまり実際に作曲家が頭で思い描いていた音かどうかは、あまり気にしていません。

ガーディナーのベートーヴェンは、名盤となった交響曲全集のほかに、モーツァルトのレクイエムの校訂で有名なレヴィンのフォルテピアノによるピアノ協奏曲全集、ムローバと組んだヴァイオリン協奏曲、そして2つの宗教曲、唯一の歌劇「フィデリオ」があります。ちなみに面白いのは「フィデリオ」は第一稿の「レオノーレ」を収録しているところが古楽器学者らしいところ。

今回挑戦するのは、レクイエムからの流れで宗教曲。ベートーヴェンは小さめの宗教曲はいくつかありますが、まとまった大曲となると2つしかありません。それが、20歳代で作った「ハ長調ミサ曲」と生涯最後に近い作品となった「荘厳ミサ曲」です。

最初の作品は、教会典礼にそくした典型的なミサ曲と言われ、一方「荘厳ミサ曲」は、教会の枠を超えて完全に宗教に題材を得た交響曲という評価がされ、ベートーヴェンの思想的世界を具現化する最高傑作といわれています。

どちらも大変インパクトのある作品で、もともと歌曲系の苦手の自分も、レクイエムを通ってきた後では、なかなかいい曲だと思えます。キリスト教の儀式の式次第はわかりませんので、最初のミサ曲も音楽としての完成度はなかなか高いと思いました。

当初EBSとの録音と表記されていたのですが、実はORRの最初のレコーディング。ArchivがORRでは売れないという判断をして、表記を認知されていたEBSにしたそうです。自分のCDはORRに直してあるものでした。

ただ、やはりより心に響く感じが強いのは「荘厳ミサ曲」です。これは、ネットでは、グロリア~クレドの展開あたりが素晴らしいと評判。特にクレドは、他の演奏に比べて、大変早い展開なのに合唱がまったく崩れていないところがすごいらしい。ただし、最後がやや息切れしてか、物足りない終わり方という話が良く出てきます。

自分は他の人の演奏を聴いていないので、そのあたりはよくわかりませんが、実は最近再録音盤が出ていて、これがめっぽう評判が高い。宗教曲のような苦手なジャンルをあまり深追いするのは勇気がいるところではありますが、最初の録音よりも圧倒的に良く、過去の名盤をついに越える作品とか言う人もいるくらいなので、ちょっと聴いてみたいかんじがしています。

何にしても、こういう不得意なジャンルほど、ネットの評価とかはいろいろと検索してしまうもので、それに乗せられるとがっかりすることもあることは覚悟の上で、今日も検索欄に入力しています。