ヨハン・セバスチャン・バッハの音楽を聴いていくとなると、以前の自分のように器楽曲しか聴かない場合は、それほど知らなくても困らないのが教会暦。
しかし、声楽曲を聴きだすと、そのほとんどが宗教曲ですから、J.S.バッハが関係していたキリスト教、とりわれプロテスタントについの知識抜きでは、その半分も楽しめない。
実際のところ、キリスト教からすれば異教徒の自分のような日本人にとっては、クリスマス以外はあまりピンとこないものばかり。ただ、よーく思い出してみると、確か幼稚園の頃だったか、色とりどりに卵を塗ったりするような遊びをしたことがある。
そもそも、週という7日間の単位は、旧約聖書の神様が6日間で世界を作って7日目を安息日にしたことから始まっているわけですから、これは宗教を超えて世界中への強い影響の一つ。
気がつかないところで、キリスト教関連のイベントは、けっこう生活の中にも入り込んでいるようなところです。そもそも、世界で最も信者が多いのがキリスト教ですから、地球の上で生きていくには、知らなくても困らないけど、知っていた方がいいことの一つでしょう。
どうも、いろいろある教会の1年を通しての記念日には2種類あることが、そもそもわかりにくい。プロテスタントが重視するのは、イエス・キリストの布教行脚に従った季節の中の記念日。カトリックでは、それ以外に重要な聖者の誕生日とか亡くなった日も記念日としている。
教会暦を知るのは、バッハの音楽を楽しむのが目的ですから、一部を除いてプロテスタントの暦を中心に勉強しておけば何とかなりそうです。どっちにしても、スタートはキリストの誕生日、つまりクリスマスということなんですが、残念ながら今は春。
4月になると、キリスト教としては大きなイベントがイースター。これが色とりどりの卵が登場するイベントだったわけですが、これはキリストが磔刑に処され、3日後に復活するという聖書の話に基づくもの。
そこで、まずはここに間に合うように、ある程度の勉強をしておこうというわけです。まぁ、あらためて調べなくても、キリストへの信仰が強まるにつれ、その力を心配したローマ帝国がキリストを不穏分子として捕らえて処刑したということくらいは知っています。
それに先立って、キリストは自分の行く末を予見して、最後の晩餐で弟子たちに話をする。その中には裏切り者としてはユダ、3回イエスを知らないとうそをつくペテロなど、有名人がはいっています。
そして、なんと処刑されても復活し、さらに40日後に昇天して神となるというのが、キリストの生涯の最後の数ヶ月の奇跡というところでしょうか。
今年は4月18日が受難の日、つまり処刑されたキリストの最初の「命日」です。ここがスタート。教会暦では聖金曜日ということになります。そこで、いきなりハードルがやたらと高いのですが、必ず聴いておかないといけないのが、このキリストの一連のストーリーを含んだ受難曲です。
バッハは、「マタイ受難曲」と「ヨハネ受難曲」という2つの受難曲を作っています。実は「ルカ受難曲」、「マルコ受難曲」というのもあるのですが、ルカは他人の曲の修正、マルコは楽譜が残っていません。
何がハードルが高いって、「マタイ受難曲」は人類史上最高の音楽傑作というのが一般的な評価となっているんです。マタイが無ければ、他のすべての音楽は存在価値を否定されてしまうくらいの勢いです。
まぁ、そこまで大袈裟にしなくてもいいとは思いますが、ずっと今までそういう音楽を避けて通ってきた自分としては、いきなりエベレスト登頂を目指してトレーニングを開始するみたいなものです。
録音音楽としては、古くはメンゲルベルクの録音(1939)が傑作とされ、聴衆のすすり泣きが一緒に録音されているというような伝説もあったりします。 もちろん、自分の場合はガーディナー先生に登場してもらうことになるのですが、一般的には古楽系の演奏にの中では評判は低くはありません。
ガーディナー先生の手兵が当然活躍するのですが、ここでもひときわ素晴らしいのがモンテベルディ合唱団。これだけ完璧な合唱団は他にあるでしょうか。って、最近この手の音楽を聴き始めたばかりの自分がいうのはも説得力が低いのですか、ネットなどの評判もそんなところ。
何しろ長大な曲で、聴きとおすには相当なエネルギーが必要です。それなりのキリスト教の知識を整理して、受難曲の歌詞の内容も理解しておきたい。
ガーディナー先生を信用してはいるのですが、さすがに音楽としては最も世評の高いカール・リヒターの演奏(1958)も避けることはできそうにありません。これも廉価盤で手に入れましたので、あわせて聴くつもりです。