何にでも分化できる万能細胞として、話題になった「STAP細胞」が、いろいろな批判を受けて揺れています。
自分はニュースだけでしか知らないので、最低限の事実しかわかりません。しかし、もともとニュースとしては、リーダーの若い女性に焦点を当てた色眼鏡がかかった状態と感じています。
多少なりとも学会活動というものをしたことがあるので、だいたいどういう経過で論文ができていくのかわかります。まずは学会での口頭あるいはポスター展示による発表をします。
この時点では、簡単な審査がありますが、実際はほぼエントリーすればたいてい発表できる。内容的には、間違いがあったとしても発表者側の思惑が通ってしまう。
ですから、大事なのはこのあとに文章として投稿し、論文として完成させること。通常は、発表した学会誌に発表します。しかし、相当インパクトのある内容の場合は、より権威のある学術雑誌に投稿することもあります。
今回のSTAP細胞の論文が掲載されたNATUREは、医学・科学雑誌としては、最も権威のある雑誌の一つ。この権威の度合いは、引用される回数などによって数値化されていて、たいへんはっきりとしています。
さて、文章を投稿すると、いきなりOKになることはまずありません。簡単に合格するような場合は、その雑誌はたいしたものではありません。
通常は、雑誌側で内容を吟味する担当の専門家がいて、その人たちが細かいところ - ちょっとしたてにをはに至るまで、赤ペンをいれてくるのです。また、内容的な質問も山ほど追加されて戻ってきます。
こういうやりとりを何度もしていくうちに、しだいに赤字が減ってきて、早ければ1年くらいで掲載決定となるのですが、学会発表から数年かかる事も珍しくはありません。
ですから、その内容については発表誌も責任を持つという意味があり、もともと作為的な嘘がある場合以外では、簡単に一度公開された論文を取り下げるというのは有り得ない。
発表された論文をもとに実験をやった研究者から、再現できないという批判が出ているということですが、わずか数ヶ月で簡単に再現できなくて当たり前ではないかと思います。
いつものことですが、メディアの取り上げ方にもいろいろと問題があると思うのは自分だけでしょうか。とにかく、発表者はこれから数年以上かけて追加の論文などで、自らの論文の正しさを固めていくしかありません。