2014年10月9日木曜日

第12回田園都市リウマチフォーラム

昨日、第12回になる田園都市リウマチフォーラムでした。皆既月食が気になるところでしたが、横浜北部では雲が厚く、ときたまうっすらと垣間見える程度。月食はあっさり忘れて、勉強の方が大事。

何度も書いていますが、自分と近隣の開業医の先生で始めた関節リウマチの勉強会が発展してできたフォーラムですが、2010年からはじめて、これで丸4年になりました。

よく続いている会だと思いますが、これも参加してくれるほかの先生方のおかげ。来る人がいなければ、自然消滅してしまいます。リウマチ診療をしていく中で、自分たちが知りたいことをテーマに、話を聞きたい先生を選んできたことが要因ではないかと思います。

さて、今回は、この会の顧問をお願いしている聖マリアンナ医科大学の山田秀裕教授の出番です。たびたび講演をお願いして、そのたびに貴重な時間をさいていただき、ありがたいことです。

今回のテーマはリウマチ類縁疾患。そもそも、これがあれば絶対というものがないリウマチの診断ですので、似たような病態をしっかりと鑑別する事は大変重要なこと。

その多くが、古くから血清反応陰性関節症という呼ばれ方をして区別されてきました。血清反応とは、元々はリウマチ因子(抗変性IgG抗体)という検査項目のこと。

リウマチ因子(リウマトイド因子、リウマチ反応)という名称は、本当に誤解を招きやすく、これが出るだけでリウマチだと思ってしまう・・・患者さんはともかく、医者でもけっこういることは問題です。実際、リウマチ因子が出るリウマチ患者さんというのは2/3強で、出ない方もかなりいます。

今は、リウマチの診断では抗CCP抗体というものがより重要視されていて、リウマチ患者さんでの検出率は90%程度といわれています。ですから血清反応陰性例も、以前よりはだいぶ絞り込まれたと言えますが、それでも抗CCP抗体の出ない場合はまだまだ存在します。

特に、リウマチを心配というクリニックを初診する患者さんでは、かなりの方はリウマチではありません。自分の私感では、実際にリウマチなのは数十人に一人。逆に、9割以上は抗CCP抗体が検出されません。

 抗CCP抗体陰性の方は、大多数は加齢性だったり、腱鞘炎だったり、使いすぎだったりという、病的にはあまり心配ないものですが、稀にこの中に従来言われていた血清陰性関節症が含まれてくるわけで、開業医にとってはより注意を払わないといけないところ。

教科書では、リウマチではないということで、比較的あっさりとしか書かれていない項目で、意外と知識をアップデートしにくい部分なのですが、今回の山田先生の話で、実はかなり研究が進んでいて、具体的な治療についても最新の知見を解説していただき助かりました。

自分の体に対して、自らアレルギーを起こしている、自己免疫性疾患の一つという考え方は古くからありましたが、その実態がインターロイキンと呼ばれるサイトカインの一種を介して起こっていることが判明し、治療方法も抗サイトカイン療法に移行してきているとのこと。

抗サイトカイン療法は、リウマチではもう当たり前になった生物学的製剤を用いるもので、これは医学全体がマクロを対象とした治療からミクロをターゲットに、より原因治療に近づく流れにそくした物です。

従来行われていた、消炎鎮痛剤だけ、あるいは抗リウマチ薬を併用してみる方法よりも、積極的な改善が認められているので、正確な鑑別診断と治療介入の重要性は増していると言えます。

リウマチ医にとっては、リウマチに目がいきやすく、「リウマチ以外」を忘れがちになる傾向があります。開業医レベルでは、「リウマチではない」と判断できることは大変重要ですので、今回の話はとても役に立つ内容でした。