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2014年10月6日月曜日

モンテヴェルディの仕事

ヨハン・セバスチャン・バッハは、主として18世紀前半に活躍した大作曲家であり、宗教音楽の中では、受難曲などと膨大な教会カンタータを残したことは人類の偉業として忘れてはいけません。

しかし、音楽がバッハから始まったわけではなく、もっと古くから宗教、特にキリスト教と音楽とは密接に結びついていたわけです。ただし、時代を遡るほど資料が乏しくなり、話は混沌としてくるのはいたしかたがないところ。

クラウディオ・モンテヴェルディは、1567年生まれで、亡くなったのは1643年。バッハと、およそ一世紀ずれているイタリアの大作曲家として知られています。ちなみに、自分が敬愛するレオナルド・ダ・ヴィンチはさらに一世紀前になります。

時代分類では、ルネッサンス音楽とバロック音楽の両方にまたがり、サン・マルコ寺院の楽長として名を馳せました。

宗教音楽の中では「聖母マリアの夕べの祈り」が特に有名ですが、これは1610年の大規模な作品で、この成功がサン・マルコ寺院へつながります。

しかし、必ずしも宗教音楽を活躍の中心としたわけではなく、生涯にわたって作り続けた世俗歌曲であるマドリガーレの最初の曲集が発表されたのは1587年、二十歳の時でした。

マドリガーレは、自由詩に基づくルネッサンス期から続く多声(ポリフォニー)歌唱曲であり、独立した各声部が対等に扱われます。教会で歌われるポリフォニーはモテットと呼ばれました。

モンテヴェルディは、これらの伝統的なマドリガーレを、音楽演奏の「第一作法」と呼び、より歌詞が聴き取りやすい独唱、または重唱を中心としたモノディ形式を「第二作法」としました。

新しい第二作法では、必然的に楽器による伴奏が強化され、全体を通じて奏でられる低音域を中心とした伴奏である「通奏低音」が一般化されることになります。

使われる歌詞も、神への賛美が中心だったものから、より自由なものを取り入れ濃厚な感情表現を行い、いわゆる「ラブ・ソング」も登場することになります。

さらに、不協和音や半音階も大胆に取り入れることで、より音楽が劇的なものになりました。これらは、明らかにバロック音楽の基礎となるものでした。

マドリガーレ集は、モンテヴェルディのライフワークでしたが、生前に発表された8集までに、ルネッサンス音楽からバロック音楽への様式の変化がはっきりと示されています。

これらが集約された形となったのが、1607年に発表された謝肉祭のために作られた音楽劇「オルフェオ」で、今日のオペラの原点とも言える作品になります。

さらに「聖母マリア~」も、第二作法を駆使した、今までの宗教音楽とは一線を画すドラマチックな変化に富む音楽となり、今日までカトリック音楽史の最高傑作と称されるものでした。

そして、サン・マルコ寺院の楽長となった以降は、宗教音楽と世俗的な音楽劇の両方にわたって多くの作曲をして活躍し、1632年には司祭に就任しています。

残念ながら、その多くは譜面が失われてしまいました。「聖母マリア~」と「オルフェオ」以外には、現在では演奏可能なものとしては9集まであるマドリガーレ集、ミサ曲とモテットを集約した「倫理的・宗教的な森」(1641)、晩年の歌劇「ウリッセの帰還」(1641)と「ポッペアの戴冠」(1642)が主なものです。