関節リウマチは、自己免疫性疾患の一つです。
自己免疫とは、自分の体に対して免疫反応を起こし、自らの組織を障害してしまう病気のこと。免疫とは、本来外から進入した異物(抗原)に対して、特異的に反応する抗体が異物を除去する仕組み。
そこで、リウマチで何が抗原になっているのか判明して、抗原を除去する方法が確立できれば、リウマチの根本的な治療につながるわけです。
そこで、先週、注目されたニュースがありました。
京都大再生医科学研究所の伊藤能永(よしなが)助教らの研究チームは16日、関節が痛み、進行すると手指などが変形する「関節リウマチ」は、体の細胞内に
ある特定のたんぱく質に反応することで引き起こされると発表した。論文は17日に米国科学誌サイエンスに掲載される。病気の原因となる物質を特定したこと
で、新たな治療法の発見につながる可能性があるとしている。(10/17 毎日新聞より)
これで 病気が治ると、色めきたった患者さんもたくさんいたことと思いますが、ちょっと待てよと。
新聞に書かれていることをよく読んでみると、「リウマチ患者374人の血液を調べると、約17% (64人)がRPL23Aと呼ばれるたんぱく質に対する免疫反応がみられた」とあります。
うん? 17%? それっぱかりか? というのが、最初の印象。確かに、原因の一つかもしれませんが、「病気の原因を特定した」という記事の表現からすれば、だいぶさみしい感じがするのは否めない。
残りの83%・・・大多数と言っていいかわかりませんが、かなりの患者さんでは検出されないものであれば、他に主要な原因となるものがあると思うのが普通です。
もちろん、この論文のオリジナルを読んでいるわけではないので、あまり辛口の評価をすることは慎まなければなりません。
京都大学の正式な発表内容が、HPに掲載されているので、これを見ると「RPL23Aが病気の原因となる自己抗原の一つとして働いている」という表現をしており、他の抗原の存在を認めています(当然でしょう)。
iPS細胞のこともあり、メディアの京都大学の注目度は高く、一般向けのニュースとして「いいとこだけ」切り出す報道になっていることは否めない。
ですが、だからと言って、この研究にけちをつける気は毛頭ありません。この研究の素晴らしいところは、自己免疫の仕組みを解明する手法を確立した事にあるのではないでしょうか。
つまり、リウマチ、またはその他の自己免疫性疾患でいろいろな抗原が関連している可能性があり、それを発見していければ、最終的に病気の原因治療につながるわけです。
そのスタートになる研究の一つとして、十分に評価に値するものだろうと思います。一般のニュースにならないような、似たような研究は世界中からいくつも発表されていて、21世紀になって着実にリウマチの包囲網は狭まっているということを実感します。