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2019年11月17日日曜日

Bruno Walter / Marhler Symphony #9 (Columbia SO,1961), (WPO,1938)

突然に、ブルーノ・ワルターの登場。

実は、小学生の時に最初に知った指揮者は、カール・ベームとレナード・バーンスタインでしたが、もう一人、ブルーノ・ワルターの名前も聞いていました。

ただし、当時すでに大大大巨匠という扱いで、すでに亡くなっていたので、レコードを買ったことは無く、後にクレンペラー、フルトヴェングラー、トスカニーニなどと並んで、自分にとっては旧世代の方々という印象から手を出さないでいました。

ところがマーラーを聴きだしてみると、マーラーとの直に面識があるワルターとクレンペラーについては避けては通れないことがわかりました。特にワルターはマーラーとの関係が深く、直接的にマーラー自身から曲についての話を聞いているわけで、ワルターの演奏の中にマーラーの意図が見え隠れしている可能性を否定できません。

何しろマーラー自身ができなかった、第9番の初演の大役をこなしたのがワルターですから(1912年、ウィーンフィル)、これを聴かないわけにはいきません。

コロンビア・レコード(CBSレコード、現ソニー)がステレオ録音の技術が始まった時に、高齢ですでに引退同然だったワルターを説得していくつものレパートリーを録音しました。その中に多くのマーラー作品も含まれたのが幸いということなんですが、注意したいのは演奏のコロンビア交響楽団。

実は、これは実体が無いコロンビア・レコードの録音用のフリーランスが集まった臨時編成楽団です。もちろん技術的にはそれなりの人たちなんでしょうけど、常設の楽団と比べると質が劣ることは否めない。

そこらを割り引いて・・・さて、第9番を聴いてみる。第1楽章、第2楽章はまぁ無難な展開。ところが、第3楽章で、そのあまりテンポの遅さには愕然とします。マーラー自身が楽譜に直接書き込んだ「きわめて反抗的に」という指示とはかけ離れたゆったり感があり、何か違うという印象。

そして、逆に第4楽章の早いことにさらに驚きます。主観的演奏に走ったバーンスタインとは対局的なアダージョで、あっという間に死に絶える感じ。気持ちを入れすぎるのもどうかと思いますが、これがバーンスタイン前のマーラー解釈ということなんでしょうか。

これでワルターの評価を決めてしまうのはどうかという感じなので、さらにさかのぼって1938年のウィーンフィルとの有名なライブも聴いてみました。もちろん、モノラルですし、さすがに戦前の音源ですから音質はかなり悪いけど我慢できるレベル。

この時点では、マーラーは亡くなって27年で、まだほとんどの演奏者・聴衆にとって身近な実在の有名人。当然、ウィーンフィルには実際にマーラーの指揮で演奏した、あるいは第9番初演時のメンバーは多数いたと思います。

演奏は・・・なるほど、歴史的名盤との評価のある録音ですから悪いわけはない。風通しの良いマーラーという印象です。演奏時間は、バーンスタインは90分、アバドは85分くらいですが、61年の演奏は全体で80分の快速でしたが、38年だと約70分と超特急。

第3楽章は早めできりっとした感じですが、第1、第4楽章がやたらと早く、第2楽章はそれに対してゆっくり(それでも61年より早い)で、全体のテンポが似たような感じです。

昔の録音は、技術的な制約上、長時間録音が難しかったことがあり、全体的に早めのテンポ設定はしょうがない。ワルター自身は、38年の録音には満足していなかった節がありますが、ライブとしての熱気みたいなものと9番の骨格をしっかりと浮き彫りにした演奏という感じがしました。