グスタフ・マーラーは1860年の生まれで、10代のうちに作曲をはじめたらしいのですが、実際に演奏可能な譜面残っているものは1880年、二十歳の時の2つ歌曲が最も古いとされています。
自ら作詞して、もともとは片思いの相手に捧げる5曲の歌曲集とするつもりだったようですが、3曲作ったところでふられて計画は頓挫。
春に Im Lenz
冬の歌 Winterlied
草原の5月の踊り Maitanz im Grunen
「草原の5月の踊り」は、最初の歌曲集若き日の歌(Lieder und Gesange aus der Jugendzeit)」にタイトルを変えて転用されました。「若き日の歌」は1892年に出版されましたが、3部構成で、第2部と第3部の9曲は「少年の魔法の角笛」から詩を取っています。
第1部は次の5曲からなります。
春の朝 Fruhlingsmorgen (作詞リヒャルト・レアンダー)
思い出 Erinnerung (作詞リヒャルト・レアンダー)
ハンスとグレーテ Hans und Grete (草原の5月の踊り)
セレナード Serenade aus Don Juan (作詞ティルソ・デ・モリナ)
幻想 Phantasie aus Don Juan (作詞ティルソ・デ・モリナ)
「若き日の」を付けたのは出版社の都合で、本来のタイトルは「歌曲集 (Lieder und Gesange))」だけ。第1部は、一部交響曲に利用されたパートもありますが、基本的にピアノ伴奏譜による古典的ドイツリートの雰囲気が漂い、正直あまり面白いものではないかもしれません。
全15曲を網羅した録音は意外と少ないのは、たぶんLPレコードの収録時間(一般的に片面20分、両面で40分)の関係もあるかもしれません。
ここで紹介するのは、バーンスタインのマーラー物ので共演が多いジャネット・ベーカーの1982年の録音。このアルバムでは、初期の2曲、「若き日の歌」全14曲、続く「さすらう若人の歌 (Lieder eines fahrenden Gesellen)」全4曲をすべて網羅していて、まとめて聴くのに便利。
ベーカーの歌唱は、落ち着いていて嫌みが無いので聴きやすい。収録順序はバラバラですが、初期の作品と後年のものでは、曲としての完成度は歴然としていることがよくわかります。