グスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団(Gustav Mahler Jugendorchester, GMJO)は、クラウディオ・アバドによって1986年に創設されたオーケストラ。その名が示す如く、団員資格は26才までに限られ若手育成を目的としています。
団員は1992年以後はヨーロッパ全体からオーディションによって選ばれ、退団後はヨーロッパを中心にドレスデン・シュターツカペレなどの多くの名だたるオーケストラでさらに活躍をしています。
アバドがユース後の優秀な人材の受け皿として、1997年に組織したマーラー室内管弦楽団(Mahler Chamber Orchestra, MCO))に在籍するOBも多く、事実上ルツェルン祝祭管弦楽団の中核はMCOが担っています。
GMJOは、若者だからと言って馬鹿にはできません。何しろヨーロッパ中から集まった選りすぐりの人材たちですから、実際ルツェルンの世界的な名手たちに混ざってもまったく引けを取りません。
アバドとGMJOの共演ビデオは2本あり、いずれもマーラーの交響曲。2006年の第4番と2004年の第9番です。なんか、音楽学校の卒業記念公演とでも言いたくなるような雰囲気があります。
とにかく、指揮者アバドを見つめる真剣な眼差しが気持ちがいいし、またアバドね彼らと音楽を奏でることが本当に楽しそうなところが素晴らしい。
この点は、映像だからこそはわかることで、CDの音だけでは伝わり切れないポイントです。アバドに対して辛い評価をする人も、実際にコンサートに脚を運んだり(もう無理ですけど)、あるいはこういったビデオを見れば考えが変わるんじゃないでしょうか。
4番は、演奏としては悪くは無いと思いますが、ソプラノのジュリアン・バンセ(この時点では37才なのでユースじゃありませんね)がどうも雰囲気をこじらせている感は否めない。
難曲の9番は、ルツェルンのベテラン勢の落ち着き払った演奏に比べると、良い意味でも悪い意味でも若さの勢いが優った演奏という感じ。
自分は技術的なことに口を挟める立場ではありませんが、マーラーの曲はアンサンブルだけでなく室内楽的な独奏パートも多いのですが、さすがに個々の力量についてはまったく不安を感じませんでした。
さすがにクラシック音楽の本場はヨーロッパにあり、彼らが次世代の土台を支えるポジションを埋めていることを実感します。また、そういう若者の育成に力を入れていたことは、アバドの偉大さの一端として忘れてはいけないと思います。