そしたら、気づくとほとんど同じ時期、つまり50年代後半に録音されたものに偏ってしまいました。結局、ジャズらしいジャズが最も元気だった時代ということ。60年代に入ると、アメリカでは人種偏見が強まり、多くの黒人ミュージシャンは活動が困難になってしまいます。
マイルスでさえ60年代初めは、個人的な理由もあったでしょうが、スタジオに入る機会は減り、今楽しめる音源はライブが中心です。アメリカ国内で活躍しずらくなったミュージシャンは、ヨーロッパに活路を見出しました。
特にフランスは、彼らの音楽を芸術として尊敬し、多くの演奏機会を提供したことで名盤と呼ばれるアルバムが登場するようになりました。
フランスに渡った一人に、デクスター・ゴードンがいます。テナーマンとしては、コルトレーンとロリンズがすでに人気を誇り、その他大勢扱いみたいなところがありましたが、62年の「GO!」でその存在感を発揮しました。
ゴードンの名盤としては第一に「GO!」をあげたいところですが、ここはフランスで録音し、まさにフランスというタイトルを付けた「Our Man in Paris」を推しておきたい。
ベースだけフランス人ですが、他のメンバーは当時にフランスにいたバド・パウエル、ケニー・クラークが固めたワン・ホーン・クァルテット。選曲も、いかにもジャズらしいスタンダードが並んでいて耳に入りやすい。
ゴードンのテナーは、ロリンズ系の野太い音色てすが、突飛な音作りはせず、オーソドックスな演奏。そこが物足りないというところもありますが、異邦人であってもリラックスして演奏を楽しんでいる雰囲気がひしひしと伝わってくるのがポイント。
この演奏が好きになったら、このあとのヨーロッパ・シリーズも十分に楽しめると思うので、名盤としても、ゴードンの入門編としても聴いておきたい一枚です。