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2020年7月16日木曜日

Miles Davis / Kind of Blue (1959)

無人島に持っていくたった一枚のレコードに多くの人が選び、ジャズ史上最も多くの枚数が売れ、登場して60年間、その座を譲ることが無い最高のアルバム・・・

とにかくこのアルバムの称賛することにかけては、どんな言葉でも足りないくらいで、ジャズに限らず人類の文化遺産として未来永劫遺していくべきアルバム。

約45分間の完成された音楽空間はあまりにも見事で、ほとんどがやり直し無しの一発テイクというのが嘘のようです。実際、後年、録音時のスタジオの模様が公表され、一部の別テイクやスタート部分のやり直しがあったことはわかっていますが、それでも別テイクとして完奏されたのは「Freddie Freeloader」の1曲だけ。

最初から最後まで貫かれる、まさに「blue」なイメージが万華鏡のように広がっては消え、日頃はブヒブヒと吹きまくるコルトレーンのテナーもキャノンボールのアルトも、自制された独特の世界を作り出します。

マイルスのトランペットは、すべて楽譜があって吹いているかのようなアドリブを展開します。即興とは思えないような、必然性のある音選びが全体のムードを作り出しています。

そして、異分子と思えるようなビル・エバンスのピアノが、そのムードを実践する基本を作ります。特に熱くなりすぎないクールな演奏は、エバンスのすべての面ではないにしても、終生持ち続けたスタイルをすでに見せてくれていると言えます。

一般に良く言われるのは、ハードバップのコード進行の制約を基本としたアドリブから、モード奏法と呼ばれるもと自由に音符を選べるスタイルを作り出したことが高い評価につながっていますが、そんな小難しいことは横に置いておいて構いません。

アドリブ命のファイト一発のジャズから抜け出して、音楽としての完成度を高めたアルバムであり、全員がマイルスの糸をよく理解して作り上げた世界を無条件に楽しめばよいということです。

このセッションに参加したドラムのジミー・コブは、今年の5月に亡くなりました。最後の生きる証人がいなくなって、このアルバムは完全に伝説の世界へと入っていきました。

当然安い廉価盤はいくらでも登場していますが、このアルバムはジャケットのマイルスの写真と共に楽しんてもらいたい。少なくとも、ジャケットにある「COLUMBIA」や「LP」の文字すらも、今やこの音楽の世界観の一つになっているのです。