何しろ、超有名スタンダード曲である「Misty」の作曲者として有名ですが、実は生涯楽譜が読めなかったらしい。また左利きで、左手のキックが強い事で独特の雰囲気を作り出しました。
初期には他のミュージシャンとの共演もありましたが、残された記録はほとんどがソロかトリオで、ひたすら自分だけの世界を描き続けた人。
一番の有名盤がこの「Concert by the Sea」ということになるんですが、自分がジャズを聴き始めた昔々、輸入レコード屋さんに行くと必ず並んでいて、しかもたいてい投げ売りのような価格だったということと、ジャケットの「だささ」で逆に手を出しにくかった。
というのも、ジャケット写真が、何か磯の岩の上で人が両手をあげている・・・という、どう見ても「Help Me!!」状態のデザインがピンと来ないわけで、実はいくつかのバージョンがあったらしいのですが、いずれにしてもセンスを疑います。
このアルバムは、カリフォルニアの海沿いのカーメルでのライブで、カーメルと言えばクリント・イーストウッドが市長をしていた街。イーストウッドのジャズ好きは有名で、監督デヴューとなった邦題「恐怖のメロディ」の原題は「Play Misty for Me」でカーメルを舞台にした映画でした。
そんなわけで、良くも悪くも昔から印象深いレコードなんですが、今では当日の模様をすべて収録した完全盤が手に入ります。
あらためて聴くと、やはり独創的なピアノで、パップ期の他の誰とも似ていないスタイルなんですが、両手をフルに使うことからピアノ一台のエネルギーがすごくある。確かに他のソロイストはいらないし、他の楽器からすればやりにくかったかもしれません。
一歩間違うと、ホテルのラウンジあたりのカクテル・ピアノになってしまいそうなところもあるんですが、ガーナーの独特の世界を余すところなく楽しめる一枚という感じです。